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●泣・亡・無 [十年後ディノヒバ]
十年後。入れ代わりが始まる前。
ツナがホントに死んだという前提でオネガイシマス;;











「明日 発つのか」
「うん」

昼下がりの部屋は 暖かい光に包まれていた。
まるで 悲しみも何も無かったかのように。




  +泣・亡・無+



「並盛へ帰るのは久しぶりなんじゃないのか?」
「まぁね」
「そっけないなぁ」

くすりと笑って ソファの後ろに立った。


「髪 伸びたな」


ソファの後ろに寄りかかり、座っている彼の首筋にかかる黒髪に愛おしそうに触れる。

「そうだね」

座ったまま 黒髪の主はちらりと視線をそちらに向けた。

「あなたは 相変わらずうっとおしいね」

腕を伸ばして 背後の金色に触れる。
柔らかいくせっ毛を指に絡めた。


「泣いたの?」

金色の間から見える 目が赤い。
充血した眼がふわりと笑う。


「お前は?」


目にかかる黒髪を退けようとして

ぱしっ

「バカじゃない」
手を払われた。

そして ふいとそっぽを向いてしまう。



「―恭弥」

優しく頭を撫でて ぎゅうと抱き締める。

「―…」


腕の中で

「馬鹿みたいだ」

そうぽつりと呟く。




「人の為に泣くなんて馬鹿げてる 死ぬのは 弱いか…っ」

抱き締めた腕に 生温かい雫が落ちた。
変わらない細い肩が微かに震えている。



「交渉だって言って…騙し撃ちするような弱者に なんで…」
「恭弥…」



今だけは 君のために泣いてあげる。
今だけは 可愛い弟分のために。

哀悼を―








「髪…切ってよ」

ディーノに寄り添ったまま 雲雀が言った。

「どうしたんだ 急に」
「…日本で 逢うから」

よく知る 草食動物の彼にね。


「もう 泣く暇はないから」

きっとこれから 更に慌ただしい日々が始まる。

隠せないように 何も。
あなたの手で 僕に戒めを。

「あぁ ちょっと待っててな」
ディーノは立ち上がって 道具を取りに部屋を出た。




「キレーな髪なのに」
櫛で髪を梳きながら 一人ごちているディーノ。
「もう結べなくなっちまうなぁ」
「ごちゃごちゃ言ってないで手を動かしなよ」
「はいはい」

シャキシャキと金属の擦れ合う音が響く。
黒い艶のある髪が 床に落ちていった。

「目つぶって」
「は?」
「前の方切るから」

時々肌に当たる冷たい感触に少しびくっとする。

「…耳落とさないでよ」
「お前なぁ…俺を何だと…」
「後ろの部下が居なかったら危ないクセに」
「う…」

くっくっと笑う声がする。
「ったく…」

わしわしと自分の髪を掻きながら ディーノは鋏を動かした。



「よし これでいいか」
ふっ と意識が戻る。
ぼんやりしていて少し寝ていたようだ。

「似合うな〜 恭弥」

鏡を見て 映った自分の姿に違和感。
切るのが面倒で伸ばしっぱなしにしていた後髪は無くなった。
さっぱりした といえばさっぱりしたのだが…

「…ちょっと短くない?」

ばっさり無くなった前髪。


「コレって 失ぱ…」
「そっ そんなんじゃ」
慌てて言うディーノに
「部下が居ても駄目なものもあるんだ」
追撃の一言。



「…気に入らなかった?」

どんより落ち込んだ姿は とてもマフィアのボスには見えない。
「そうは言ってないだろ」
ふぅ と溜息をついて、見通しの良くなった視界で彼を捉える。

「…まぁいいんじゃないの よく見えるし」
「…めっちゃ慰めっていうか妥協入ってねぇか?」
「さぁね」

髪を払って立ち上がる。

「じゃあね」

ドアを開け 行こうとした雲雀の腕をディーノが掴んだ。

「…何?」
「なぁ 今夜は…一緒に過ごそう」
「どうしたの 急に…」
「ん…」

引き寄せて ぎゅうと抱き締めた。

「嫌か?」
「…別に」


なんとなく振り払えなくて ディーノの胸に頬を当てた。


「明日ちゃんと起こさないと チケット代と徒労費 全額請求するから」
「あぁ」

おでこにキスされて 見上げれば頬に 唇に 沢山のキスが降ってくる。

「ふ…」

ベッドに倒れこむと 首筋に シャツを肌蹴られて胸にも 優しいキスを。
まるで 確かめるかの様に ゆっくりと愛撫される。

「恭弥…」

深く口付けられ 雲雀の息も上がる。

「ディーノ…」

今まで視界を遮っていた髪が無くなったせいか 彼の仕草が一つ一つ良く見えて

酷く 愛しく思えた。






「愛してる 恭弥」

一つに繋がって こんなに近くで、なのに苦しそうに ディーノは雲雀に言った。

「は…ぁ… ディ…」
「恭弥…」

目の下が熱くなるのが自分でも分かった。

「あい してる…」


上手く目を見て言えない自分にやきもきする。

「うん…恭弥…」
それでも嬉しそうに、ディーノは頬を寄せてきた。

「好き だ」

真っ直ぐ視線を合わせる彼に 伝えなければ。



「僕も あなたが好き」


琥珀色の瞳を 真っ直ぐ見て
云ったのに視界はぼやけた。








目が開く。
先に起きたのは雲雀だった。

白い天井 薄暗い部屋。
まだ夜明けには暫くありそうだ。

隣で静かに寝息を立てている愛しい人を起こさないようにベッドを抜けて、シャワールームへ向かった。


身支度を整えた頃には カーテンから朝日が差し込んでいた。


まだベッドに沈んでいるディーノに

「起こせって言ったのに」

ベッドのへりに腰掛けて 髪にそっと触れる。

「恭弥」

寝ていると思った相手が急にその手を取った。

「なに 起きてたの?」
「ん〜」

ぐい と手を引いて 力強い腕に抱き締められた。

「ちょっと…服に皺が寄る」
「行くのか?」

何を今更…と引き剥がそうとするのに、更に力を込めて抱き締めてくる。

「ちょっと…」
「なぁ」
行かないでくれ。

無理なこと言ってるのは分かってる。
でも 行かせたくないんだ。


「…あなたも どうせ来るんでしょ?」
「…あぁ 後でな」
「なら」
また 向こうで逢えばいい。
「あなたは僕が咬み殺すんだから それまで生きてないと許さないよ」
「恭弥…」
「それとも死ぬ気なの?」
「そんなわけ…」

ちょっとの隙をついて 雲雀からキスをした。

「情けない顔するなよ あなたボスでしょ」

くすりと笑う。

「お前こそ…生きてろよ」
俺の手の届かない所で 死んだりしないで。

「ワオ 誰に向かって言ってるの」
「そうだな」


優しく笑って 手を離した。

「送ろうか?」
「いい 草壁拾ってかないといけないから」
「そうか」


ぎぃ とドアを開けた。


「じゃあね」



一度だけディーノの方を見て 雲雀は部屋を後にした。





xxx





十年後。タイムスリップ前夜。
書きあがってからツナが生きてるらしいこと知ったです…orz
なんか十年後は言葉にしないでも解りあってる二人とかだったらいいなとか…

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