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▼Text
○冷たいキス [ジズユリ]
ジズとユーリ。
食事にいく前のヒトトキ。










    +冷たいキス+




♪ぽろり ぽろり

金属のメロディ



くすくすくす…

そして 小さな笑い声。




ソファに深く腰掛けた男が言う。


「まったく あなたって人は」
呆れた様な声。

しかしその声の主は 愉快そうに口の端を上げる。



くすくすくす



「だって ジズったらおかしいんだもん」

紅い瞳がそちらを向く。



薄紅の薔薇のようなその口許には
白く光る 牙。


バイオレットのドレスを纏う 少女?
年の頃は16、7に見えるが 幼い笑顔を浮かべて ジズと呼んだ人影にもたれかかる。



♪ぽろり ぽろん



「ねぇ」

ジズの襟を開け、肌蹴た肩口に
かぷり。
白い牙を突き刺す。

「ほら」

口を離すが その傷口には血は滲んでこない。

「こんなに深く噛んだのに 血が一滴も」



くすくすくす



「初めに言ったでしょう?」


顔を半分仮面に隠した 紳士は言った。

「私は人間ではないからって ね ユーリ」

ユーリと呼ばれた 銀髪の子どもは 笑ったまま紳士―ジズを見つめた。

「知ってるよ 幽霊なんでしょ? でも変なの」


くすり


「触れるよ? 冷たいけど」
「それは私が特別だからです」
さらりと言って退ける。


くすくす

「変なの〜」
「あなただって 変でしょう」

ジズがユーリの纏っているドレスに手を入れる。

「男の子なのに なぜドレスなんです?」

綺麗な笑みを浮かべて ユーリが言った。


「ジズが似合うって言ったから」
「あの時は女の子だと思ったんですよ」


陶器の様な頬にキスを落とす。

「ドレスがよく似合っていたから」
「おじいさまの見立てだよ」


くすくす




かぷり。



「何度やっても血はあげられませんよ」
ねぇ 小さな吸血鬼。
「いいよ ただこうしたいだけだから」
首に抱きつく。


♪ぽん ぽろ りん


かぷり。


「もう勘弁してください」


フフッ とジズが笑う。

「穴だらけになってしまったでしょう」

肌蹴た肩は 丸い牙の痕が無数に付いていた。
ただ 黒く 点々と穴だけが。

「すぐ消してしまうくせに」
拗ねた様にユーリが言った。

「困ったオヒメサマですねぇ」
抱きついてきたユーリを優しく抱き締めて ジズが溜め息をついた。




♪ぽろぽろ ぽろ りん♪



メロディが静かに止まった。



「オルゴォルが止まりましたよ」

さぁ ユーリ。

「約束の時間ですよ」

優しくユーリの体を起こし 立ち上がるよう促す。


「もう少し居ちゃだめ?」


ぶぅ と頬を膨らませてユーリが言った。

「それでは貴方の食事の時間が無くなってしまうでしょう?朝日が昇るまでなんですから」

ジズは 紳士的な笑みを浮かべると 立ち上がり バルコニーに続く窓を開けた。


「またいらっしゃい。待っていますから」
オルゴォルを鳴らして。

「…きっと だよ」
「きっとです」



広く背中の開いたドレス。
そこに生えるのは赤い翼。

その翼を広げると バルコニーの手摺に とんっと立った。

「また会いましょう ジズ」
「待っていますよ 姫君」


冷たい唇にキスをして

夜の闇に 赤い翼が飛び去った。



「いってらっしゃい」




その背中を見送って
窓を開けたまま ジズは再びソファに戻り 瞳を閉じた。







xxx








ジズと幼ユーリの話。
妖艶な二人にしたいのですが書くの難しいッス…

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あきゅろす。
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