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○Therapy [MZD+Deuil]
神様と妖怪バンドな話。
ちょっとだけ血。







  +Therapy+

某駅の階段

今日はいい天気で 沢山の人が行過ぎて行く。

ぼんやりと雑踏を眺めながら腰掛けている少年がいた。

帽子を目深に被り、サングラスを掛けた――MZDである。




「暇だなぁ…影〜」

彼の後ろにいる影に言ってみる。影は言葉は発しないが"やれやれ"という仕草をしてみせた。

急ぎの仕事もないし…何か変わったこととか…

「あれ〜?神サマじゃん? 何してんの〜」

不意に呼ばれ振り向くと、ひょろ長い影…スマイルが階段を下りてくる所だっ
た。

「おぅ 久しぶりじゃん 何?帰り?」

「そ 仕事終わって帰り〜★ 神サマは?」

MZDの隣まで降りてくると、ヨッコイショ なんて言いながらスマイルは腰を下ろす。

「んあ 別に・・・ぼーっと」

スマイルはヒヒッと笑って

「何?神サマってヒマ?」

「んなことねーって。今日はたまたまだよ。」

ホント〜? などと他愛ない会話が続く。



「そーいやお前んトコの姫は?最近会ってないけど 元気?」

不意に姫――ユーリのコトを出されてスマイルが言葉を濁す。

「う…ん 元気は元気なんだけどネェ…」

「…? ナニ?なんかあったん?」

スマイルが視線を泳がせる。

「大したことな…くはないんだよネ。今外に出せない状態だし…」

外に出せない…?
MZDは怪訝な表情を見せる。

「なんかビョーキとか?」

「病気…ではないと思うんだけど…何ていうか…」

MZDの口元に怪しい笑みが浮かぶ。
退屈を凌ぐアイディアが浮かんだらしい。

「なぁ 今から行ってイイか?」

スマイルがちょっとギクっとした仕草を見せる。

「いい…けど…」

少し戸惑った様子を見せた。が すぐに向き直って言った。

「…ねぇねぇ 神サマって何でも出来る?」

「? まぁ 大概のコトは」

神サマですから なんて答えるとスマイルはMZDの手をギュッと握って

「なんとか出来ないかなぁ… 神サマ〜」

上目遣いで懇願してきた。

「な…ま まぁ様子を見てみないと何とも言えないけど…」

「よーし☆ んじゃ早速」

すっくと立ち上がるとMZDの手を引いて城へ向かった。





「タダイマ〜 お客サン来たよ〜」

城に着くと、スマイルの声を聞いてアッシュが出てきた。

「あ MZD お久しぶりッス。どうしたんスか?急に」

「どうもこうも…なんかオモシロ… 面倒なことになってるらしいじゃん?」

MZDがそう言うとアッシュがスマイルを見た。少し睨んだ様に見えたのは気のせいじゃなさそうだ。

「いや〜 神サマならどうにか出来るんじゃないかなって。ボクらだけじゃもう八方手塞がりだったし…」

アッシュは小さく溜息を吐きながら

「…そうッスね。とりあえず中へ…」

客人をリビングへ通した。




「んで?ナニがどーしたのさ?」

ソファに腰掛けるとアッシュがお茶を出してくれた。

「う〜ん…説明は難しいんだヨね〜…何て言うか…」

「何が原因かもよく分かんないんスよね」

二人とも上手く言葉が見つからないらしい。

「ん〜… とりあえずどんな感じになってんの?」

少し困った顔をしてMZDが尋ねる。

「んと〜… 急に若返るコトってアルの?」

そうスマイルが切り出した。

「は?若返る?」

言葉の意味が飲み込めなくてMZDが聞き返す。

「もう二週間近くなるんスけど…急に若返りっていうか小さくなってしまったんス」

「…コドモにでもなったって言うん?」

その言葉に二人が頷く。

「マジで?ヤツの意思でとかじゃなく?」

「違うみたいなんだヨ。戻れなくなってるみたいだし」

「仕事が一段落付いて城に戻った次の朝 起こしに行ったら…」

どうやら本当に面倒なコトになってるようだ。

「…スマイル? 帰って来たのか?」

その時、カチャリとドアが開いて声の主…ユーリが現われた。

「よう 邪魔してるぜ〜」

「…!? MZD?」

ビックリした様子で後ずさるその姿はユーリ…に間違いないのだろうが、見たところ6、7歳にしか見えない。 

幼い姿のユーリは黒いレースの付いたひらひらのワンピースを身に着けている。

拍子抜けした様子でMZDはユーリを眺めた。

「うわ マジ小さくなってる…ってその格好は? いや可愛いけどさ」

ユーリは眉をしかめながら

「…この姿では手持ちの服が大きいのだ。だからメンバーに頼んだら…こんなものを」

と言ってスマイル達を睨んだ。

「いや〜 似合うからイイジャナイ☆神サマも可愛いってさ☆ ついでに昔の服も…」
などと言っているスマイルの鳩尾にユーリの小さい拳がヒットする。

もがいているスマイルをそのままに、隣のソファに腰掛けた。

まるで陶器人形の様なユーリは背もたれにもたれ掛かると、少ししんどそうにふぅ と息をついた。

「自分では戻れない原因みたいなのは分からんの?」

MZDがユーリに聞くとふるふると首を振って

「こういうのは初めてだ…ただこの姿になってから…だるい」

ふぅん…と顎を撫でながら、MZDは何か思い当たった様子だ。

「お前ら最近結構仕事あったんでない?」

「は…?」

「そういえば…」
 
アッシュが茶菓子を出しながら話に入る。

「雑誌の取材やらアルバム発売の番組撮りがあって…初めて全国ツアーもやったんスよ」

「その間にユーリは曲作ったりしてたもんネ〜 新曲出すし」

復活したスマイルがそう言うとMZDが軽く口の端を上げる。

「なるほどね。簡単じゃん」

「分かったッスか?」

アッシュが反応した。

「ただの過労じゃん?ちょっと度が過ぎたんでカラダが維持出来なくなったんだろ」

「あー… 言われてみれば…昼間の活動多かったしねぇ」

スマイルも頷いた。

「陽の高い内の活動も多かったろうし 吸血もそんなできないだろ?」

「でも…そしたらどうやって元にもどればいいッスか?」

アッシュが聞いてきた。

「あー それも簡単☆」

そう言うとMZDがユーリを隣に呼んだ。

「このまま暫く眠り続けても戻るけどかなり時間がかかるからな」

MZDはアッシュがさっき菓子を切り分けたナイフで自分の親指の付け根に傷を付ける。

そしてユーリの頭を掴んでその口に血の垂れる傷口を押し当てた。

「! んん〜…」

さすがにアッシュもスマイルも驚いた様子でソファから立ち上がった。

ユーリも初めは抵抗していたがやがてとろんとした眼になり、MZDの腕に凭れ掛かった。

「ユーリっ!」

慌ててスマイルがユーリを抱き起こすと、目を閉じたまま静かな息をしている。

「ちょっと荒療治だけどな。風邪でも栄養と休養が大事だろ?」

まだ少し血の垂れる傷口を舐めながらMZDが飄々と言う。

「栄養剤投与ってトコかな。まぁ神サマの血だから ちょっと刺激が強くてカラダの方が機能を停止させたんだろ。もう二、三日で回復するよ」

二人がホッとした表情を見せた。

「でもイキナリでびっくりするっス!今傷の手当てを…」

「いーって 舐めときゃ治る」

MZDはそう言うが、アッシュは急いで救急箱を持ってくると手際よく処置を済ませた。

「神サマありがとね〜☆一時はどうなるかと…このままの姿でも可愛いけど色々問題出るしね」

バンド活動も出来なくなっちゃうしね とスマイルが苦笑いする。

「あ〜 でも勿体無いな〜★ヒヒッ 戻る前に写真でも撮っておこーっと」

「スマイル…」

アッシュが呆れたように溜息をつく。

でもやはり安心したのか口元には少し笑みが浮かんでいる。

「でもホント良かったっスよ ありがとうっス」

MZDはふっと笑って

「いやぁ でも永く生きてるお前らでも知らないことってあるのな〜」

「種族が違うからネェ 本物の吸血鬼ってそんなに居ないシ」

珍しいんだヨ〜なんてスマイルが腕の中のユーリの頭を撫でながら言う。

ふぅん とMZDは少し冷めたお茶を啜った。

「んじゃ 目が覚めたら連絡くれよ」

「あ…よかったら夕飯でも… すぐ用意するっス」

立ちかけたアッシュを制して
「ん〜 今日はイイわ また今度誘ってよ」

そういってMDZが立ち上がると 影がジャケットを着せてくれた。

「ユーリの目が覚めたらまた来るよ Deuilにポップンパーティの依頼持ってな」

じゃーな とMZDは帰路についた。






薄暗くなった空にぽっかり三日月が浮かんでいる。

家に帰る道すがら MZDは影に話しかけた。

「いい暇つぶしになったな〜 やっぱ魔物って面白いな」

やれやれと影は笑って肩をすくませた。






xxx





前にやってたサイトからの再録です。

神とスマは何気に仲イイといいな。二人でイロイロ遊んでそう。

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あきゅろす。
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