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○願事 [山獄]
山獄で初詣な話。












   +願事+





「もうすぐ来年な〜」
「もうすぐって…何分でもないだろ?」


コイツがウルサいから結局買ってしまったコタツに入ってTVを見ている。

「コレを見るのが日本の大晦日なんだぜ」
とか言って延々と歌番組を見せられていた。


「なぁ もう他見ていいだろ?」
「ん〜 後演歌だけだしな」


リモコンを取り上げてチャンネルを変えていく。


「K-1やってんじゃん 早く教えろよな」
「え〜 大体最後見りゃ結果わかるじゃん」
「そこまでが重要なんだっつーの」
実際 試合は殆んど終りの方で、もう少しでチャンピオンが決まるようだった。




ゴーン



遠くで何か音が聞こえた。

「なんだ?」
「あぁ 除夜の鐘が始まったんだよ」
「ジョヤ?」
「大晦日に衝く鐘のことだよ」
「へ〜」

これも日本の大晦日らしい。

「色んなイベントがあるんだな」
「ん〜 外国だってカウントダウンとかやるってTVでやってるぜ?」
「まぁ…そうだけど」



「よし。じゃあ行くか」
山本が立ち上がった。
「は?今頃何処へ…」
「だから初詣にだよ」
「こんな遅くに行かなくてもいーだろが。明るくなってからでも…」
「今行くから意味あんだって」

分からなくもないけど、コタツから出る気にならない。

「たぶんツナ達も来てるんじゃね?」
「うし。行く」

10代目が来てるなら行くしかないだろ。


「急に反応良すぎなのな…」

何やら落ち込みだした山本を尻目に出かける用意を始めた。







「ゔ〜 さみぃ」

深夜零時過ぎの神社は冷えていた。
しかし、沢山の人が集まっている。
ツクヅク日本人はイベント好きなんだなと思った。


「獄寺 手」
「ん?」

言われて手を差し出すと、温かい大きな手に包まれた。
「冷たい手だな〜 煙草の吸いすぎじゃね?」
「…るせー」
「何か温かいモノでも飲むか」
自動販売機へ向かう。

「オレ コーヒー」
「じゃ俺も」
「オゴリな」
「…はいはい」



ガシャコンッ



「ほらよ」
「 あっちっ…」
渡されたコーヒーの缶が熱くて 袖を伸ばして掴む。


「ふーふーしてやろうか?」
「ハァ?」
「…冗談です」
そんな思いっきし睨まなくても とか言ってるバカはほっといて、人混みに目を向ける。
狭い境内にひしめく人の波が、夜の暗さで一層判別しにくくなっていた。

「こん中から探すのは難しいかもな…」
「 …」
10代目に会えると思って出てきたのに…


「とりあえず参拝してこうぜ 途中で会えるかもよ?」
「おぅ…」




参拝客の列に並んで、暫くしてオレ達の番。

がらんがらん 鐘を鳴らして手を合わせた。(オレ一応クリスチャンだけど…)


"十代目が今年も健康でありますように"
"ボンゴレの繁栄が続きますように"

それから…


…それから


"…隣のバカが…山本が怪我しませんよーに"



「そろそろ行くか」
「うん」







「熱心に何お願いしてたん?」

帰る道すがら、山本から聞いてきた。


「あ?お前こそ何願ってたんだよ?」
「ん〜 秘密☆ 言ったら叶わねーっていうし」
「じゃあオレも言わね」
「なんだよ〜 教えてくれたっていいじゃん」
「言ったら叶わねんだろうが」


叶って欲しいんだから…



「寒いな〜 早く帰ろ」
「コタツ入りて〜 10代目にも会えなかったし…」
「ん〜…  ほら 手」

つい条件反射で出してしまった手を握られて、山本のコートのポケットに入れられた。


「あったかい?」
「 …ぉぅ」
「ん よかった」

締まりのない顔してんな まったく。




「次は姫初めだな」
「なんだ?ソレ」
「後で教えてやるのな」




大晦日が過ぎて、まだ暫く"日本のお正月"とやらを味わう事になるようだ。






xxx






お正月ということで。
個人的には初詣は日が昇る前が好きです。暗い中出掛けるのが…



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