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○キヨシコノ夜 [ディノヒバ]
ディノヒバでクリスマスです。







外は夜の闇が迫っている。


「今年はホワイトクリスマスになりそうだなぁ」


そう言って笑ったのは誰だっけ?

どうして僕は 今独りなの?


ディーノのばか。





+キヨシコノ夜+






「恭弥どこ行きたい?」

ある日の夕方、急にあなたが言った。

「何の話?」
「クリスマスだよ 恋人同士には大事な問題だろ〜」
「ふぅん」

正直クリスマスなんか忘れていた。

「なぁ オダイバって面白いのか?」
「は?何それ」
「この前TVで見たんだよ 海の近くででっかいビルのある…」
「…お台場?」
「そうそう。カップルがたくさん…」
「群れるの?」
「あ…」

チャキ と僕がトンファーをかまえると

「やっぱ今の無し な?」
「…ふん」

慌てて手を振るディーノに、仕方なくトンファーをしまう。


「恭弥は行きたい場所なんかないのか?」
「…別に」
あなたと一緒に居られれば なんて言ってやらないけど。



「じゃあドライブでもするか」
「いつもと同じじゃない」
「だってどうせどこ行っても人だらけだろ?なら二人きりになれる方がいいし」
にまっ と笑われて

「好きにしたら」

口元が弛みそうになって ふいと向こうを向いた。






夕方の応接室。
仕事をしてる僕の傍にあなたがやってきた。

「今年はクリスマス雪かもしれないんだってな」
「そうなの?」
「この前TVで言ってた」
「…TVばっか見て よっぽど暇なんだね」
「暇じゃねーよ 恭弥と一緒のクリスマスだからリサーチしてんだよ」

ぐい と抱き寄せられて

「絶対 一緒に過ごすんだからな」

髪にキスされる。

「…勝手にしなよ」

頬が熱くて


ディーノの服に顔を埋めた。






「ごめん 恭弥 急な仕事が入っちまって…いつそっちに着けるか分からないんだ」

一本の電話。

「…ふぅん」



別に
いつものことじゃないか。

急な仕事だって 本国に帰って
次会えるのがいつか分からないなんてザラで…



今日は…



絶対一緒に過ごそうなって言ったのは誰?


ベッドから降りるのも億劫だよ。



行く場所なんてそう多くない。
でも家には居たくなくて


"デートくらい制服じゃないので来いよ"

あなたが買った服の隣に掛けてあるいつもの制服に袖を通した。





そしていつもの学校の廊下。

学校は冬休みで生徒は殆どいない。
遠くで運動部の声が聞こえる。


応接室に入ると、冬の透明な陽射しが部屋を照らしていた。

「雪は降らなそうだね」


誰もいないのにそう言って椅子に座った。

革貼りの椅子に沈んで 日溜まりの中まどろんでたら
いつの間にか眠っていた。





『きょうや』

声が聞こえた気がして目を開けた。


陽は陰って、雲が空を覆っていた。


「……」


黄色い小鳥が机に乗ってきた。

「ヒバリ ヒバリ」
「さっきの声は…君じゃあないみたいだね」

幻聴が聞こえるようじゃ僕もヤキが回ったね。



携帯を見ると、一件の着信。

"ディーノ"

あなたの名前が表示された。



声 聴きたい。
でも 今はかけたくない。


「…寒い」

陽が陰ったせいで暖房の焚いていない部屋は冷えていた。


机に突っ伏して

「…ディーノのばか」


呟いて 目を閉じた。







♪緑たなびく〜 並盛の〜


ぱちり と目が覚めた。


携帯が光っている。
辺りが暗くてそれしか見えなかったから。


ディスプレイにはあなたの名前。


出る?



出たく…ない?



考えてるうちに電話は切れた。



バカは 僕。

電話くらい出たらいいんだ。
それで たっぷり嫌味を言えばいいのに…


出るのが 怖い?


また謝られたら "会えない"確認をしてるような気がするから。


窓の外は夜の闇が濃くなりはじめていた。
時計を見ると21時に手が届く時間。


「…帰ろう」


傍らで寝入っている小鳥をそっと抱き上げて、応接室を後にした。







「ただいま」


誰もいない家。
親は海外赴任中だし もう慣れっこの筈だったのに


酷く寒く感じるのは何で?


自室の電気を点けると、ベッドに倒れこむ。



…ぐぅ
「お腹…空いた」


そう言えば朝から何も食べてない。



「…もぅ いいや」


フテ寝を決めこもうと目を閉じた。




「恭弥」



また幻聴?
本人が居ないのに あなたは声まで鬱陶しいの?


「恭弥」


目を開けると、金髪が目の前にあった。


「ディー…ノ」
「ごめんな 遅くなって」


がばっと起き上がった僕をぎゅうと抱き締めて

「体冷たい…どうしたんだよ」
「別に いつも通りだよ…仕事は?」
「バッチシ片付けてきたぜ」
いつもの様にニッと笑う。
「これで暫くは恭弥と一緒に居られる」


「…そう」


ぐ〜ぅ



「恭弥…腹減ったのか?」
「…うるさい」


これは 本物?


声が聞こえた位だから幻覚とか…


トンファーで脇腹を突いてみた。
勿論 目の前の彼の。

「ぐふっ 痛って…いきなり何すんだよ」
「うん 本物みたいだ」


髪を掴んで唇に咬みついてやった。

「…遅いよ」
「うん ごめんな…」

苦しいって言ってるのにぎゅうぎゅうと抱き締められて
お腹空いて反撃する気も起きないよ。


「メシ食いに行こう な」
「もうきっとどこもやってないよ」
「う… オレの泊まってるホテルのルームサービスとかじゃ…嫌か?」
「…何でもいいよ もぅ」


ベッドから降りようとしたら、ふわりと体が浮いた。


「よし。行こう」
「ちょっと 下ろしなよ 一人で歩け…」
「いいからいいから☆」


あったかい。



今くらいは…あなたがしたい様にされてあげるよ。


そのまま部屋を出て 階段を降りて行く。




「そういえば あなた不法侵入だよね」
「こ…細かいこと気にすんなよ」



玄関のドアを開けて外に出る。
「雪 降らなかったな」
「そうだね」
話す息が白い。



晴れた夜空に
降るような星が瞬いていた。





xxx





ディノヒバクリスマス話。
ホントはクリスマスにはアップする筈だったのに、途中で書いた分消えてたりなんだりで遅くなってしまったです…(ヘタレ)


この後の夜話も構想は出来てるんですが…書けたらアップしてみます…



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