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時には残酷さも必要で
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 かなり危ない類の人間とも過去に契約していて、珍しくもなんともないようにあっけらかんとしているが、いくら供給源とはいえ変な人間と契約したら損するのは悪魔の方だ。
 えげつない命令を受け続けるとか、SMマニアでSの主なら命令で痛みを伴わせられる。

 まさか、悪魔には痛覚がないとかは……有り得るんだろうか?

「あんま変な人間と契約するのは止めとかねぇと……痛い思いするぞ?」

「……悪魔の俺を心配してるのか?本当に、どこまでも変わった奴だな」

 俺は特に変わっているという自覚はないし“人間嫌い”を除けば、至極当然のまっとうな思考をしていると自負している。
 いや、“人間嫌い”という時点で、充分偏屈で変わり者か と苦笑を零すとマンションを後にした。

 コンビニで適当に見繕った2人分の弁当と飲料を手にし、帰宅する。
 リビングのソファでは、悪魔が寝転がりながら、昨日図書館で借りた悪魔召喚の本を読んでいた。

 テレビも何もない部屋だったから暇だったよな。俺は買った弁当をテーブルに並べる。惣菜もあるし、野菜ジュースで手軽に栄養素を補えるような配慮も施した。

 悪魔に栄養とかはあまり関係なさそうだけど。本に夢中で一切こちらを顧みないので、俺は「飯だッ!食うぞッ!」と語尾を強める。
 

 上体をソファからむくりと起こし本を閉じると、無言で俺が買った弁当を食し始めた。ちなみに悪魔用の弁当はボリューム満点の海苔弁当だ。
 揚げ物や米の上に海苔が敷かれ、量とカロリーが一番高い物をなるべく吟味した。足りなかったら困ると思い、デザートとしてヨーグルトも追加。

 俺は牛丼があったのでそれにし、惣菜は卵焼きときんぴらごぼうなどを選んだ。飲料は野菜ジュース以外では2Lのスポーツドリンクも買った。
 スーパーで買い物したかのように重かったが、俺も日本男児の平均的な筋力ぐらいはあるので、そこまで苦ではなかった。

 黙々と口にする悪魔を横目で追い「旨いとかなんか喋れよッ!」と例に漏れず二重命令を下すと、ようやく悪魔が口を開く。

「……旨くも不味くもない。ただの大量生産されたコンビニ弁当の味だ」

 こいつ、やっぱり可愛気がねぇ。けれども“大量生産された”っていう厨二病全開の言葉のセンスは、俺の心をくすぐった。
 案外、似た者同士なのかと自問自答してみる。俺も愛想はないし可愛げはないので、悪魔と通じるものはあるのかもしれない。
 箸を休め、にっこりと悪魔に笑いかけると、怪訝そうにこちらを見返してきた。

「熱でもあるのか?それとも明日は雪が振るのか?」

 おい。俺の満面の笑みを、ここぞとばかりに気色悪がるんじゃねぇよ。滅多に拝めない貴重な面差しなんだぞ。

「槍が降るかもしれねぇな。誰かと飯食うのも何年ぶり以来だし、お前は厨二病全開で面白おかしいわで、つい……な」

 悪魔は不思議そうに首を傾げた。

「厨二病とはなんだ?人間の病気の類か?」

 説明するのを面倒に感じた俺は、ざっくりと簡潔に済ませた。

「風邪とかの病気じゃなくて、お前らみたいな“悪魔”って存在が既に厨二なんだよ。あと、お前の話す言葉全般だな。さっきの大量生産ってのにはウケたぞ」

「よくはわからんが……どうやら貶されているようだな」

 漂う空気がピリピリと鋭くなってきて、声には怒気が滲んでいた。悪魔を不快にさせてしまったようで、気圧された俺は急いで誤解をとく。
 

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