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時には残酷さも必要で
5
――あぁ、気持ち良い。落ち着く。

 最高の気分に浸っていると、そういえば今日会社サボっちまったなぁと余計な現実に引き戻されて。
 チッっと舌打ちすれば、路地裏の奥から明らかに浮浪者っぽい男が姿を現し、声をかけられた。

「君、今薬やってるよねぇ。黙ってて欲しいよねぇ。……有り金全部だしな」

 右手には薄暗い此処でもハッキリと見える、銀色に鈍く光るナイフが握られていて、俺を強請たかる。
 距離を一気に詰めて相手の右腕を蹴り上げれば、ナイフが地面に転がり落ちる。それを素早く自分で持ち、今度は相手を壁際に押しやると、喉元にナイフを食い込ませた。

「俺今すっげー気分イイのによ。邪魔すんな豚野郎がッ!!」

 タンをペッと地面に向かって吐き捨て、俺は路地裏を後にした。解放された浮浪者は、腰を抜かしてずるずるとへたりこんでいたが、気にも留めない。
 酒でも呑んで行くかと、適当な居酒屋に入り、ビールを注文して呑む。カウンター席で腰掛けていると、隣にそこそこガタイが良くて、短髪で如何にもホモ臭い男が寄ってきた。

「アンタ、見たところノンケっぽそうだけど、男とも経験済みだろ?何かそんなフェロモン感じるぜ?」

「そうだって言ったら?お前はどうしたいわけ?俺とヤリたいのか?」

 あまり呂律も回っていない中、そうだと小さく耳打ちされた。ふーん、随分ストレートな誘い方だな。
 如何にもホモな男は、俺の腰に手を回してくる。もう片方の手で顎を撫で回されれば、不思議と悪い気はしなかった。

「そういや、アンタ今何をキメている?キメセクは楽しいんだぜ?俺も薬中だからよ、分かるぜ」

「知らね。炙って吸った」

「ポンプはやってねぇの?」

 ポンプとは何かと尋ねれば、注射器で打つ事を差すらしい。俺はそれも経験済みだと、ニッっと歯を零しながら笑う。
 男は目を細めて、満足そうに頷いた。

――2人で近くのラブホに向かい、男は先ほど言っていたポンプで薬物を体内に巡らせていた。俺はその間にシャワーを浴び、風呂から上がる。
 直ぐに男との濃厚な性交が始まった。2人して夢中で唇を貪り合っていると、既に固くそそり立った俺の一物に男の手が伸びる。

 上下に摩られれば、気持ちが良かった。薬の影響もあるんだろうが、感じやすくなていた俺は男と舌を絡ませながら、首の後ろに手を回す。

「……すっげぇイイッ!…ぁ…ッ!!」

 俺も今度は男のを握って扱くと、互いに立ち、向かい合いながら股間を摩りつけあった。あまりに気持ちがヨすぎて、俺の方が先に呆気なく射精してしまった。
 

「ご、ごめッ!!」

 謝ると「じゃあフェラしてくれよ」としれっと言ってきて、俺は戸惑いながらも膝を折って、口の中に男の一物を咥えこんだ。
 ストロークを繰り返したり、括れたカリの裏側を舐めていると、男が俺の頭をがっしりと掴んで、腰を振り始めた。

 最初こそ動きが遅かったものの、徐々に早くなり、喉の最奥突かれるたび咽てしまいそうになるのを必死で我慢した。
 

「出すぞッ!!」


 男の呼吸が荒くなったとともに、動きも加速してゆく。頭を一段と強く掴まれた時、男は俺の口内で熱を迸らせた。

――にっがッ!!

 ごくんと喉を鳴らして、彼の精液を飲み込んだはいいものの、あまりに独特な味と匂いで目眩がしそうだ。
 めぐみに口淫していた時だって、飲み干しはしなかった。というより、あいつのは先走り自体しょっぱくもなく無味だった。
 

 焼いた秋刀魚に牛乳というか、もうなんて例えたら良いのか分からない衝撃が俺を突き抜ける。薬物やってるからこそ味覚も研ぎ澄まされているのだろうか。
 食べる気はまるで起きないが、無性に喉がカラカラに乾いてきたのと、口中に残る苦味を消し去りたくて、俺は男に一言告げてから水を飲んだ。


「てか、アンタ薬ヤった後で良く居酒屋なんて行ったな。これヤルとさ、食べ物も飲み物もいらなくなってくるぐらいだぜ?炙りだったから、そんときはあんまり効果出てなかっただけか?」
 

「そうかもなー」

 ゲラゲラとお互いに下品に笑い合い、男が俺をベッドに押し倒す。後ろの蕾にとろッとしたローションをたっぷり塗りこまれ、中指をすんなり受け入れる。
 俺の身体が男の下で面白いように跳ね、腰をひくつかせた。思いきり収縮を始めたそこは、いやらしく男を誘うような締めつけをして。


「ふ…ぅッ!……あッ!」


 男が中指を曲げて、次いで人差し指も入れる。何度も何度も潜り込む指使いに、俺は意識を委ねる。ローションのおかげか、いつも以上にじゅぷじゅぷと淫らな音が鼓膜に張り付く。
 一応さっきは無理させてしまった反省からなのか、男は丹念に馴らしている。そうしてもう3本の指をくわえ込むと、指が急に引き抜かれ、男自身が俺の狭い入口へとあてがわれた。

「ん…ッ!」

 先端を飲み込みながら、一気に奥まで収まると、俺の弱い部分を集中的に攻めてきた。――前立腺。そう、ここが弱い。

「あぁ……んッ!!」

 女のような甘い嬌声をあげながら、男を誘う。迷宮に迷い込んだ、俺の行き着く果ての末路のように、ただ男根と薬を欲してる。
 男が腰のピストンに緩急をつけながら、自分はガクガクと首を振り、唇の端から唾液を滴らせては、身体の最奥で熱を感じ取った――。

――ラブホテルに来てから、8時間は経過していた。その間中ずっと男と性交を繰り返していたが、全く疲れなんて感じなかった。
 むしろ、目が冴えまくって覚醒したかのように。男に跨って自ら腰を振ったり、騎乗位やら、松葉崩しやらと、めぐみとはヤらなかったプレイを次々と堪能できた。

 これは最高過ぎるッ!!だから薬物依存は抜けらんない……と。ネットやテレビでしか知らない程度の知識しかないが、芸能人や一般人がハマるのも分かる。
 んでもって薬といえば性交だッ!!1人で勝手に大きく頷く。ようやく一息ついたところで、男がアドレスを交換しようと申し出てきた。

 俺は二つ返事で快く承諾し、アドレスを交換し終えると、男はホテルの代金を手渡してくる。

「もうそろそろ行かんとヤバイ。仕事なんだよ。ところで、アンタ名前は?」

「俺?純だけど。そういうお前は?」

「俺は拓郎。純ッ!またヤろうぜッ!!じゃあなッ!」

 爽やかに拓郎は帰って行った。俺は残されたホテルで1人自慰に耽っていた。幸い、ここにはバイブなども豊富にあるし。
 さっきまで拓郎のを咥えていた蕾は、すんなりと極太バイブを飲み込んだ。スイッチをオンにすると振動で肉壁にも伝わってくる。

「は…ぁ……ッあンッ!!」

 上下に出し入れを繰り返し、前立腺を探ると直ぐに見つかった。ほぼ無意識に快楽に身を任せ、弱いイイところを集中的に狙い、手に持ったバイブの動きを速める。
 

「あぁぁあッ!!イイッ!!」

 ピンと張り詰め、昂ぶった自身をも捏ねくり回すと、激情が簡単に押し寄せては、熱は昇りつめた。
 
 

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