アーザの火
4
「なん…やてッ?!」
それが本当なら、未知の力を宿した翼人が今ここに2人も存在しているという事になる。
内海は衝撃を受けた。軍の上層部は間違いなくこの事実を知っていて、だから大将の国定に隠密命令を下したのだ。
おそらく、治癒以外にも別の使い道があるのだろう。最初から真白を利用するつもりの軍は、罪状など建前に是が非でも手に入れねばならず、
また、光り輝く翼にはそれだけの価値があったいう訳か。
元在に再度、何者かと問い掛けても決して口を割らないだろうし、今は国定の容態が第一だ。内海は考えるのを後回しにし、状況を見守る。
床に散らばった羽根を、真白は全て国定の腹部に乗せた。鞘に収められているナイフの刃を抜き、躊躇なく自分の掌を切りつける。
血を数滴、羽根に染めらせると――そのまま垂直に国定の腹部目掛けて振り下ろした。
内海はまさか真白が国定をナイフで刺すとは夢にも思っておらず、想定外の行動に目を疑う。
――騙されたッ!!
そもそも信用したのが間違いであったと、激しい後悔と怒りが内海の脳を支配する。
「おいッ!!ふざけんなやッ!!さっきの言葉は嘘やったんかッ?!!」
今にも真白を殺そうと、臨戦態勢の内海を元在は止めに入る。
「落ち着くんじゃッ!これはそこの兄ちゃんを助けるための儀式みたいなもんじゃッ!!」
「どこが儀式やねんッ!!はなから殺すつもりやったん……あ…ッ」
内海が元在と揉めていると、いつの間にか国定は目を覚ましベットから上体を起こしていた。
「く…国定ッ!?」
確かに腹を刺されていた筈だが、傷や血すら出ておらず、むしろ顔色も良くなっている。
イーリスと呼ばれたナイフの刃は失くなっていて、柄の部分だけが真白の手元に握られていた。
「……内海……か?どうやら、助かった……みたいだな。ったく、腕を切られた程度で俺がくたばるとは…な」
内海は国定の元へ歩み寄ると、胸ぐらを掴んだ。
「馬鹿野郎ッ!御堂よりお前の方がよっぽど危なかったんやぞッ!回復魔法でも治らんし、
一時はどうなるかと…ほんま、心配したんやぞッ!」
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