[携帯モード] [URL送信]

アーザの火
6
(しっかし、国定が目覚ますん早すぎやで。正直、凄い力やな)

 謎が多すぎて内心穏やかではない内海だが、今は国定の無事を素直に喜んだ。

 真白は、握っていたナイフの柄を元在に渡しお礼を述べる。元在はそれを元の引き出しの中にしまうと、内海は不思議そうに首をひねった。

「刃が無いナイフの柄とか要らんやろ。何で捨てへんねん?」

「これで良いんじゃよ。何日かしたらまた使えるようにするんじゃから」

「元在さんッ!」

 真白は慌てて元在に詰め寄る。

「貴方は医者ですが、余生のためにもこれ以上ご自分の羽根の力を使うべきではないですッ!」

 目覚めたばかりで状況もまだはっきりとは掴めていないのに、横で聞いている国定には会話の内容が全く理解できない。 
 側にいる内海に訊くと、後で話すから黙ってろと制止された。
 光輝く翼の秘密を、また一つ知れるチャンスを逃したくない と内海は2人の会話に耳を澄ます。

「儂らの羽根は…一度抜いたら生える事はない。翼を失えば、すなわち死ぬ。他の翼人とは決定的に違う点じゃな。
じゃが、儂はもう歳じゃ。どうせ死ぬなら、羽根の力は全て患者に使って死ぬと決めておるのでな」

 真白はどうやら元在の言葉が不服らしく、眉を吊り上げ口を挟む。

「イーリスのナイフは一つ作るのに羽根が10枚必要ですし…元在さん程の高齢なら、抜き取った時の痛みや出血でさえ命取りになりかねませんよッ!!」

 よくよく元在の背中にある白い翼を見ると……左右どちらにも隙間と隙間が無数にあり、最早飛べる代物ではなくなっていた。
 身なりが物乞いのような風体だったため、そこにしか意識が向かずにいたのと、内海は国定の安否に神経を使っていたため余計に気がつかなかったのだ。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!