アーザの火
2
程なくして、扉の奥から一つのしわがれた声が聴こえてきた。
「……その声は嬢ちゃんか?」
真白は、声から察するに老人とおぼしき人物から嬢ちゃん呼ばわりされ、みるみる顔が茹蛸のように真っ赤になる。
「嬢ちゃんじゃありませんよ!元在さん!何度男で真白だと言ったらわかってくれるんですかッ!!」
「ほっほっほっ!灰音ちゃんに似てますます美女になってるかと思ってのう。良い男はつかまえたかの?」
「つかまえませんッ!!そんな事より、今すぐに輸血して頂きたい黒翼の患者がいます!」
「まぁまぁ、そう慌てるでない。灰音ちゃんはのんびり屋さんだったぞい」
「元在さんッ!」
元在は真白に急かされ小屋のドアを開く。内海達が予想していた通りいかにも隠居しているであろう風貌の老人がそこにはいた。
白髭が長く、しわが顔中にあるのが唯一の特徴とでもいうべきか。
下手をすれば物乞いに見えるようなシワシワにくたびれた服を着て真白を出迎えるが、想定していたより来客の数が多い事に流石に驚きを隠せない様子で
「なんじゃ?!お主らはぞろぞろと「説明は後や!爺さん!コイツに一刻もはよ輸血してやってくれッ!!」
内海はほぼ叫びに近い声をだして初対面である元在に助けを求めると、元在も何か悟ったのか「こんな狭い家にそんな人数入りきらんわい。……お前さん以外は外で待っとれ。嬢ちゃんもじゃ。」
指名された内海は元在に頭を下げた。
「恩に着るでじいさん!必ずこの馬鹿を助けたってな!」
国定を抱えながら内海は室内に入った。一人納得がいかずに閉めだされた真白は扉の前で元在に懇願する。
「待ってください!僕も手伝いますッ!!なにせ、この黒翼に傷をつけたのは自分ですから……。」
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