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アーザの火
※28
――国定が目を覚ましたのは、見覚えのある顔がドアップで写し出された光景だった。

「よぅ、もう目覚ましたん?早いやん」

「内海ッ!!おまッ!!顔ちけぇんだよッ!!」

「いやぁ、寝顔ごっつ可愛いかったで?この場所も昔を思い出さへん?」

 よく周りを見渡せば、見慣れた木々が生えた場所に二人はいた。

「……シャーマの森?」

「せやで、結界張ってな。軍の奴等にも、お前の仲間どもにも暫く見つからへん」

「……何考えてやがるッ!!霧也を攻撃した挙句、俺まで掻っ攫っていくなんてッ!!!」

 一発ぶん殴ってやろうとした右手が、地面に押さえ付けられ上に、内海が国定に覆いかぶさる。

「安心せぇや。傷は大した深くしてないから、生きとるんちゃう?そんな事より、わいは今からお前を犯すで」

 冗談かと思って、振りほどこうとしたが、内海の力が強くて全然抵抗出来ない。

「犯すって……何なんだよッ!?急にどうしたんだよッ??何でこんな監禁みたいな真似をする?!」

 訳が分からなくて焦っていた国定だが、内海は至って真顔だった。

「……見せたるわ」

 そう短く告げると、軍服を脱いで上半身を曝け出す。
 
「この胸の刻印、何だか分かるか?これはな、古城、つまり軍に逆らったら死を意味する物や。だからお前の味方になりたくても、なれなかったんやで?」

「だったら、もったいぶらずに初めからそう教えてくれッ!!俺はいつだってお前の隣にいただろッ?!」

 俯きがちに視線を下げれば、国定の睫が震える。
 内海はそんな国定の顎を掴み、視線と視線を無理やり重ね合わさせる。

「アホやなぁ。そんなん元帥以上にしか知らん極秘事項やで?しかも、元帥以上には皆、この刻印が刻まれとる。……まぁ、わいの場合は特例で、

軍に所属したと同時にだがな」

 国定の髪の毛を指で梳きながら、内海はもう片方の手で除々に国定の服を脱がしてゆく。
 急すぎる展開に国定もあたふたしながら、力を込めて抵抗を試みているが、敵いそうにない。

「じょ、冗談がすぎるッ!!内海!!やめてく……」

 言い終える前に、唇にキスをされる。内海とは二回目のキスだが、今の状態ではあまり嬉しくない。
 ぬるりとした感触が僅かな隙間を狙い、口内に入ってゆく。自然と舌と舌を絡ませ、国定の胸が上下すると次第に頬が紅く染まる。

 苦しいくらいの、今までの感情が全部詰まった内海なりの愛情表現だった。呼吸さえ奪い取ってしまうかのような、火をともした熱情が国定を次第に変えてゆく。
 最初は嫌だった。こんな形で再会するのも、内海はどうあっても国定の仲間にはならない事実を知ってしまったのも。

 けれど、今はそんな事どうだっていい。こんなにも愛する人がいて、自分を求めてきているのだから。
 内海は唇を離そうとはせずに、さらに八重歯から前歯を舌でなぞってゆく。その感覚に背筋がびくりとしながらも国定も必死で応じてゆく。
 
――この間した時よりもずっと余裕がないな、全く。

 何て思う思考さえ、直ぐに掻き消えて、唇が離れてゆく。最後にチュッと軽く口付けされると、国定の唇の端から飲み込みきれなかった唾液があふれ出てゆく。
 それさえ内海は奪い取って、首筋をなぞる様に舐められる。

「……あッ…」

 軽く吐息が漏れてしまう。

「首筋、感じるん?」

 国定の上半身は裸に晒され、首筋を中心に舌で吸い尽くされれば、内太ももがずくりと疼いてきた。
 まさか、自分がこんな事されただけで、軽く勃起してしまうだなんて。信じられないと同時に、快楽がまたも襲ってくる。

「安心せいや。今まで可愛がれなかった分、たーっぷり優しくするさかい」

 小声で耳打ちされ、内海の吐息が近く感じるのも、悪くは無いな……とさっきまでの混乱も大分落ち着いてきた。
 相変わらず逃れられないけれど、抵抗する気ももう無い。内海が国定の下半身の衣服を脱がすと、緩く勃ちあがってきたソレが空気に晒される。
 
「なんや、感じとるやんけ。弱いのは首筋だけやないやろ?」

 ニヒルに内海が笑えば、頬がまた紅潮しだす。ぷいっと横目に視線を逸らせば、「またそうやってわいから逃げようとする」とかほざいてくる。

「違……ッ!俺はその……恥ずかしくて。は、初めてだし。こんな事許すの、内海ぐらいだからな」

「可愛い言葉、使ってくれるやんッ!」

 何故だか無性に内海をぶん殴りたくなったのは、国定の性格ゆえにだろう。
 素直じゃない天邪鬼な性格のせいかもしれない。

 軽く国定の唇に内海が口付けをすると、今度は内側の太ももをゆっくり手で擦りながら、乳首を舐められる。

「……んンッ!…うつ」

 びくんと一際大きく感じて、名前が最後まで紡がれなかった。乳首を散々舌で転がされ、ぷっくりと突起した頃には、内海の唇が離れてゆく。

「……なんや?やっぱ下も触って欲しいん?」

「ばか……ッ!や、やめてくれッ……じゃないと俺は……」

 すると、内海にふわりと優しく髪を撫でられた。

「イっても良いんやで?むしろ、わいでこんなに喜んでくれて……嬉しくて可愛くてしゃあないわ」

「内海……ふッ!?んッ!」

 不意打ちのキスだった。またも口内に忍び込み、勝手に動き回る舌に付いていくのがやっとだというのに。
 口腔を弄られ、喉まで舌が届き激しく貪られる。苦しくて、軽く咳き込んだら、あっけなく解放してくれた。

「大丈夫か?!すまん、国定があんまりにも可愛くって、歯止めが効かなかったわー」

 それだけ内海に余裕が無いのも分かってはいたが、喉まで舌を届かせるって、相当なもんだ。
 
「だ、大丈夫だ……ッ。その、江月にもこんな事してたんだなお前」

 またも内海から視線を逸らしてしまう。でないと、嫉妬でどうにかなってしまいそうだから。
 狂おしい程の独占欲。剥き出しの感情があふれ出てしまう。

 けれど、内海は真剣な顔つきを崩さなかった。

「江とはまた違うわな。こんなんわいにさせるんは……国定、お前だけや。それに、約束通りあの日から江とも誰とも寝とらん」

「ほ、本当かッ?!……良かった。俺やっぱ内海じゃないと駄目なんだ……ッ」

 国定はただただ、嬉しかった。一筋の涙が瞳から零れ落ちるように。それを内海は指で優しく拭ってくれる。
 
「愛してるで、国定。もうわいだけのモノや」

「俺だって、内海だけを愛してるッ!」

 もう二人に言葉は要らなかった。代わりに沢山の愛撫を受けて、国定はそのたびに赤くなったり怒ったり恥ずかしがったりしていた。
 最後に一緒に繋がれた瞬間――熱はほぼ同時に解き放たれた。

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