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一泊二日と額に拳銃






「ようこそ」
「………。」

にこにこと胡散臭い笑顔を浮かべながら歓迎してくれた沢田くん。私は腰に当てられた手をゆっくりと手に取ってから乱暴に振り払った。括弧只の頭の中だけの想像だ。括弧閉じる。「わざわざご招待どうも有難う」「どういたしまして」そう言いながら沢田くんはやっぱり未だ腰元に位置する手にぐっと力を込めて先刻よりも近い距離に私を引き寄せた。うわぁ嫌だ。離れたい。「ははは…」引きつり笑いでさり気なく「離せ」と主張してみたけど。

「ん?」

………やけに満足そうに笑う沢田くんにさっきの言葉を口に出して言うことはできませんでした。何故かって?言わなくとも判ってほしい。相も変わらず必要以上密着している沢田くんと私はそのままの体勢でただっ広い廊下を歩く。これだけ広いんだから別にくっつく必要ないんじゃね?(またしても心の中だけの叫びだ、嘆きだ)ついさっきまで一緒にいた雲雀さんは沢田くんが来るや否や「群れるのは嫌いだ」とか言いながら何処かに行ってしまったし弐織さんは弐織さんで本当に少しの挨拶をしただけで帰ってしまった。マジKYカスアホ間抜け容姿端麗従者。一つ褒め言葉が入ってしまった。

「ていうか何処に行ってるの?」

道案内するでもなくただ歩いている気がしてならないんですけど。

「何処って、お前の部屋だけど」
「はい?」

何やら聞き捨てならぬ言葉。

「今日お前此処に泊まりだぞ」
「訊いてないんですけど」


何と二連続で衝撃の事実を知ってしまった。「荷物ないよ着替えとかないよ泊まる気ないよ」「荷物も預かってるし着替えもその中だしお前に泊まる気が無くても俺は泊まらせる気満々だから」何だコイツ!ていうか荷物って「アレか、弐織の野郎か!あのクソ野郎か!」「いい人だよな」シニカルに笑む沢田くん。

「地獄だ…魔境だ………」
「一体どんな想像浮かべてるんだお前」

少なくともいい想像ではない。
ああ何ということだろう。こうなるなら何が何でも引き返すべきだったのだ。此処まで来る途中道端に倒れていた誰かとそれを踏み付けるサドオーラ全開な雲雀さんを見掛けた時点で帰るべきだったのだ。「此処がお前の部屋」あああああと後悔の念を胸中で並べ立て嘆いている私を余所に沢田くんはドアを開けて私を招き入れる。

「……わーすごーい」
「一人で寝るのが嫌なら俺の部屋に来いよ?」
「わーうれしーい」

駄目だ。泣きたい。寧ろ死にたい。棒読みな私の発言なんか何時ものことだとスルーしてしまう沢田くんが憎い。ついでに言えばうちの保護者が一番憎い。「ファミリーの為ですから」とか言って飄々と躱しそうだ。私の意見は勿論認められもしない。

「おいダメツナ」

もう一層今からでも逃げてしまおうかな。此処二階だし、大したダメージはないだろうし。「おい、お前」……でも逃げたあとはどうしようかな。無謀だろうか

「おいっつってんだろ」
「あでっ」
「…………はぁ」

一人模索していたら突然頭に衝撃が走った。沢田くんが暴力を振るったのかと彼を見れば溜息を吐かれて指を差された。その方向を辿ってみれば黒いスーツに帽子を被った人が目に入ったんだけど次の瞬間には「…………。」銃口が視界一杯に広がりました。ソレはそのまま私の額の中心へと突き付けられる。

「俺を無視するとは中々いい度胸してんじゃねーか」
「………あー…」

銃って冷たい。

Avvelenamento di
colore primario

(内心心臓ばくばく言ってます)




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