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GEAR SIDE
雨上がれ




「ファック」

腰掛けた窓際でそう呟いたのは冴えない顔をしている咢で、樹もそうやって彼が眺めた空へと、その頭上から覗く様に目をやった。
腕をついた硝子の向こう側では季節柄の雨が頻繁に降り続いているし、例えやんでいても多くは冴えない曇り空を広げている、それが六月と言うものだ。
そうして休日である今日も例外などでは無く、雨雲は憂鬱な灰色でもって暖色をひた隠しにしているのだが、しかし今ゆっくりと晴れ間が近付きつつある事に、樹の声はいくばくかのトーンを上げてみせた。
「向こう晴れて来てんじゃんかよ。雨上がったらちょっくら気分転換行かね?」
それで咢は、ゆっくりと頬杖を付きながら頭上を仰いだ。
「お前って無駄に活力あるよな」
「こらこら、健やかに元気だと言いやがりなさい」
「じゃあジメジメがタリーからパスなんつったら、俺は卑屈に不健康だとか言われたりすんのか?」
「つれねーなぁ」
捏造気味の溜息と共に、重心はずるずると窓を伝って落ちて来る。
「鼻かんだティッシュでも包んで紐で吊して祈っとけ。それで地面すっからかんに渇く位晴れたら、付き合ってやらなくもねーぞー……っと」
「それって“てるてるぼーず”の事?俺、雨っ降りとか雨上がり直ぐって結構好きだけどなー」
「水溜まりには自主的に突っ込んでくタイプか?お健やかにお育ちの事誠に結構な事で」
「ガキん頃なぁ。リカ姉になんぼ怒られたか――」
囲われる寸前で逃げ出す事に成功した咢は、そのままベッドへの数歩分の距離をひたひたと這って行く。
それから立て直した体制でギシリとベッドのスプリングを鳴らせた頃に、あ。と呟かれた声を耳にして、横たわろうとしていた身を留めた。
「咢。やっぱ行こうぜ咢」
なんで?咢がそう尋ねる間も、必要も無かった。
「あれ、探しに行かね?」

振り返る樹の向こうには、虹の橋が見えている。





fin.



++++++++++
「だって虹が見れるかもしれねーじゃん」


2006.06.15up。







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あきゅろす。
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