[携帯モード] [URL送信]

GEAR SIDE
Tightrope Trap






飯は喰わせてるのにどうしてこんなに軽いのか。
そう思いながら、人の腹の上に無遠慮に乗っかってる軽くて薄い身体を眺めている。
見下ろして見下してくる冷たい片目は俺を観ている。
「俺は何だよ?」
「お前はペットだ」
肩に置かれた手の、爪が立ってキリキリと食い込まれた。
機嫌が悪いのか躾がなってないのか。多分で両方だ。
俺は今にも逆立ちそうな髪を撫でてやり、返す手で軽く首を鷲掴む。見下してる表情はピクリとも動かないから更にほんの少しだけ加える圧力に、唾を飲み込む喉だけが上下した。
ふと思う。
そうだこんな感じに絞まる首輪でも買おうか。
細くて生っチロイ首にはやっぱり黒が似合うだろう。それでリード引いて散歩して、欲しいモノは全部与えて、そうして飽きるまで遊んでやれば、少しは喜んでジャレついてくるかもしれない。
「犬か?猫か?」
「鮫だな」
強いて言うなら。
「あんたは何だ?」
「俺は鰐」
硬い皮膚でざらざらと地を這い、大口開けて全て飲み込む。大口なのとろくに噛みもしない辺りは鮫も鰐もあまり大差無いが、鰐は海にゃあ居ない。“鰐鮫”なんて呼び名があったとしても、鮫は鮫で鰐は鰐。
鰐は所詮鰐で、あんな綺麗なトコにゃ居ない。
「――なら首輪が要るな」
するりと滑る両手が俺の首に回る。喉仏を圧迫しながら、やはりキリキリと爪が食い込まれる。
見下してくる片目は神経質に、瞬きすらしないで俺だけを観ている。
「なぁ。俺は何だよ」
「お前は可愛い弟だ」
「――嘘だな」
嘘じゃない。嘘じゃあない。
そう言おうとした矢先、頬に触れようとした手は避けられて、“がぶり”と肩に噛み付かれた。





fin…?



++++++++++
がぶっとね。


2005.08.03up。









【BACK】








あきゅろす。
無料HPエムペ!