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GEAR SIDE
手の届くこの距離に瞳を閉じる





手の届くこの距離に瞳を閉じる。


『帰ってこい』

そう言っちまいそうな衝動を必死に抑えこんだ。

ああ、見なくても分かる。
小せぇ手が俺のシャツの端を引っ張ってる。
――お前の癖だ。
触れちまえば歯止めが効かなくなる今には反って好都合だがな、だが何時からだろうな。
お前がそうやって俺との距離を置くようになったのは……。
あと数ミリでも近付けば、俺は不様に『傍に居ろ』と言っちまうだろう。
今俺にビビったお前が咄嗟にしがみついた、そこの糞ガキを半殺しにしちまうだろう。
――それは出来ない。

「……ありがと…お兄ちゃん」
鼓膜を撫でる震えた声。
触れない。
今は拭ってやれない。
だから。
……泣いてんじゃねーよ馬鹿が……。

――息苦しくて死にそうだ。

ゆっくりと離される手。
離れていく気配。

――そうだ、それでいい。

早く。
早く。

何もかもがどうでもよくなっちまうその前に。
この腕が不様にお前を攫っちまうその前に。

手の届くこの距離から早く……。

――俺が目を閉じてる間に消えてくれ――……









++++++++++
マガジン読んで即興。ありがち失礼。

本当なら今すぐにも触れてしまいたい、その衝動を抑えている二人にボロ泣き。
海人兄さん『漢』だね。
ますます惚れました。


2005.04.27up。


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