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社長令嬢は王子様!?
10

白崎サンと一旦別れた後、俺は靴箱に向かって歩いていた
途中何人かの先生とすれ違い、早退か?と聞かれたから、まぁ一応。と適当に答えておいた

そして俺は出来るだけゆっくり歩いた
理由としては単純で、もう少しだけ長くこの学校にいたいからだ
もう少しだけ長く
それでも靴箱には着く訳で…


「何かあっとゆう間だな」


何時も微妙な距離だなって思ってた靴箱が、今日は何だか近く感じた


「そー言えば、アイツ…晴姫には何も言ってねぇや」


七埣 晴姫(ナナセ ハルキ)…俺と裕健の幼なじみの女子生徒
気が付けば、俺達は何時も一緒にいた
小学校も中学校も高校も
だから何も言わずに行くのは気が引けた
だが、晴姫は今授業中だ

さて、どうしたものか…

俺は、どうするか考えながら靴箱に手を伸ばし、靴箱の戸を開けて靴を取り出した
そこで、ふと思い付いた


「あ、そうか。置き手紙を書けば良いのか」


そうと決まれば早速書こうではないか
俺は、自分の靴箱の中に入れていた英語のノートを開き、ページをビリビリと破った
筆入れも、忘れた時の為に靴箱に入れていたから、助かったと言うか…置き勉をしていて良かったとか一瞬思った


「えー…と…」


思い付いた言葉を破ったノートに書き込んで、それを二つに折って晴姫の靴箱に入れていた
裕健の靴箱にも、同じ様にしてメモとゆう名の手紙を書いて靴箱に入れた


「よし。即興で書いたから、文脈はおかしいが…ま、いっか」


多分あの二人なら文脈多少変でも大丈夫だろう。と思いながら、筆入れと数冊の教科書とノートを持って、その場を後にしようとした


「あ、上靴持ってかなきゃいけねぇのか」


危ない危ない
上靴忘れるところだった
明日からこの学校に来ないんだよな

上靴を教科書の上に乗せて、それを両手で持った
感覚としては、お盆の上に靴を乗せている感じだった
そして靴箱に忘れ物が無いか、確認してから

「よし、行くか」


と言って正面玄関に向かった



- - - - - - - - -

「だから、さっきからそう言ってるだろ」

「でもさ、本当にそれで良いのかよ」


男は車に寄り掛かりながらタバコを吹かしていた
ニコチンとタールを肺に取り込む様にゆっくりと吸い込み、それを肺から外に吐き出す
その動作を繰り返していた


「……父と尚将様が決めたことだ。仕方が無い…と言うか煙いんだが、ゲホッゲホ」


もう一人の男…白崎零詞は手で口を押さえて咳込んでいた
だがタバコの男は、知らん顔をしていた
それどころか、タバコの煙りを零詞の方に出していた


「仕方が無い、ねぇ。…おっ?零詞、来たみたいだぜ」

「こっちに、ゴホッ!煙りを向けるなっ!ケ、ホ……無視、か」


涙目なりながら掠れ声で訴えると、タバコを吸っている男は、ニヤニヤしながら


「こりゃ失礼」


と、冗談混じりに謝った

- - - - - - - - -


正面玄関についた時、白崎サンの他に、もう一人の影が見えた
運転手だろうか…

でも白崎サンと一緒にいるなら、悪い奴では無いだろう…多分
そう思いながら車に近付いた


「おかえりなさい、瀬戸香様」

「えっと…うーんと、た、ただいま…?」

「はい、おかえりなさい」


白崎サンは、笑顔で迎えてくれた
その笑顔に不覚にもドキッとしてしまった
すると

「へぇー…コイツがお前の言ってた、野神…藤崎瀬戸香か」

「へ…?」


突然、白崎サンと一緒にいた奴に話しを振られた
つかワザワザ藤崎に言い換え無くても良いのに…


「茉!敬語を使え、敬語を!」


茉と呼ばれた男は、怠そうに返事をしながら、俺の方を向いた


「へいへいっと……コホン!初めまして、藤崎瀬戸香様。私は、舗邑 茉弘(ホムラ マツヒロ)と申します。
仕事は運転手で、藤崎社長や秘書の幹弥様の送り迎えをしています、言わば専属ドライバーをしております」


彼は口に加えていたタバコをポケット灰皿に入れて、笑顔で挨拶をした
彼…舗邑サンの第一印象は…好青年と言った感じだった
白崎サンとは違う感じの…
そう例えるなら

兄貴

って感じだ



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