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「ケット・シー、一体どこに行ってたのさ」
ニコは暖かい毛玉猫を抱きしめ、恨みがましくケット・シーを見つめた。
暖炉と燭台の蝋燭で照らされた薄暗い部屋のソファには、あの旅人が腰を下ろしている。
何かを考えいるのか、握りしめた手をぼんやりと見つめているようだ。
外套を脱いだ旅人はまだ青年といった風貌をしていた。
金糸が混ざったような薄茶の短髪に、優しい色合いのグリーン・アイ。
今は暖炉の中ではぜる火を映して、不思議な色をしているはずだ。
近くで見てみたいような、けれども怖いような。
ニコの中で不可思議な感情がせめぎあって、とても不安な気持ちになっていった。
道に迷い泊まる宿もないという青年が可哀想で、思わず城内に招き入れてしまったのだが…
ケット・シー。お前がいてくれたら、きっとこんなバカなことにはならなかったのに。
ニコは思わずため息をついたが、ケット・シーは素知らぬ顔でしっぽを振るばかり。
「変わった猫だね」
「え?」
「君の言っていることが分かるみたいだから」
「普通は分からないものなの?」
彼は少し考えるふりをしてから、猫は飼ったことがないからと肩をすくめた。
「ケット・シーっていうんです」
「……君は?」
「僕?僕はニコ。あなたは?」
彼はどこか疲れたような笑みを見せた。
長い、とても長い一日を終えて眠りにつくような、そんな微笑を浮かべている。
「ヴィクトル、ヴィクトル・アンビエール」
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