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古城の主であるシュゼットの朝はとても遅い。
太陽が一番真上にきてから、やっと目を覚ますのだ。

そのタイミングを見計らって寝室を訪れたニコが挨拶すると乱れた寝具はそのままに、彼の額に小さな口づけを落とす。


「ああ、熱い紅茶が飲みたいわ」

「バラの花びらを浮かべるの」

「そうね、朝摘みバラはとってもみずみずしいの」

「もう昼すぎだけどね」

ニコが窓を指差すと、彼女はきょとんとして自分の唇に人差し指を押し当てた。

子どものニコから見てもその仕草はとても可愛らしい。


「お天道さまの恵みをいっぱい浴びたバラはとっても力強いのよ」


と、にっこり。

化粧をしていない彼女の表情はとても幼い。

緩く揺れる黒髪は豊かで、密なまつげの下の瞳は冬の空のよう。

いつもは赤い紅を唇に引いているので、白い肌にあって童話のお姫様みたいだとニコが言うと、童話は大嫌いよと頬をひっぱたかれたことがあった。

ニコも小さな子どもみたいにわんわんと泣いて、その喧嘩は十日にも及んだ。


大人気ないないんだよシュゼットは、とニコを慰めたのは毛玉のケット・シー。

もちろん彼は話せないので、なうなうと鳴いていただけだけど。




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あきゅろす。
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