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最初の記憶は、まぶたに乗せられたシュゼットの冷たい手のひらだった。
ひんやりとした指先がニコのまぶたをゆるゆると撫でていく。
ニコ、と。
名前を呼ばれて優しい手が離れていくと、淡いオレンジの光とシュゼットの美しい微笑。
黒い毛玉のようなケット・シーがニコのお腹の上に乗っている。
耳の裏を撫でてやると、なうと気持ちよさそうな声を上げるので思わす笑ってしまった。
鈍い疲労感を訴える体に、柔らかくて暖かい寝台はとても優しい。
やっと目が覚めたのね、ニコ。とシュゼットの姿がランプの灯りの中で浮かび上がっている。
どこか寂しそうな笑み。まるで泣いているようで胸の辺りがもやもやとし、ごめんなさいと謝る。
シュゼットの指先を握るとニコの中に孤独の波が押し寄せてきた。
冷たくて痛い波だった。
ごめんね、シュゼット。
もう一度心の中で謝った。
手を握っているから、きっと彼女にも伝わっているだろう。
そして、この古城での生活がニコの全てになった。
白バラと秘密
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