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真珠の塊が目下で砕けた。ハタハタと地面にシミをつくり続けソレはあちらこちらで拡がっている。ついと指先を顎に走らせれば生温い腹の底で疼きたつこの欲情を何と呼ぼう。涙滴がまた頬を伝い滑り落ちた。
「ごめ…」
何度謝れば気が済むのか。視線を合わすことなくジャクリと乾いた地面の砂を掻いて黒くシミをつくった上へ撒く。
「…ごめん、な…カッコ悪い…」
泣きはらした顔は熟れたトマトのようで砂粒にまみれた平でグズグズの腫れた頬を擦ると伴う痛みに肩を震わせた。そこではじめて目が合うのだがオレが面倒ごとに巻き込まれたというような顔をしているからコイツはすぐ視線をそらせた。嫌悪感くらい与えられたろうか。然もなんと思ったならそれでいい。
「………泉…」
着信の向こうに掠れ痛めた声。深夜一時を回った頃。オレを呼んだのは近すぎない距離に甘えたんだろうと思った。同情や励ましならいらない。コイツは知ってるんだろうオレがそんな常套句など持ち合わせちゃいないことを。そう踏まれた上でのこの呼び出しなら。ならオレのすべきことはただ一つ。
「オレ……淋しい……」
無関心を装い続けるそれだけ。そうしてオマエが独りで闘わないように見張ってやれればいい。オレの名を呼んで淋しいと口にしてなにも変わらないのはわかっているカシコイ奴のくせに。屑星の全てが人の死の痕跡なら万年探したところでオマエの母ちゃんは探しだせない。見上げた暗闇に夜間飛行する青いライトが二つ。握った互いの片方の掌ばかりがやけに暖かく冷たい公園にはそえる花など見当たらなかった。

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あきゅろす。
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