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同盟国
「ジョンさん、お医者さんからタバコ控えるように言われましたよね?」

「はい…」

「このゴミに捨てられた大量の吸い殻はなんですか?」

シバによって綺麗に掃除された部屋で正座で座るジョンに向かってシバはタバコの入ったごみ箱を差し出した。

「…ジョンさんは大切な人なんです。こんなタバコで早死にされても困ります」

「ごめん」

ガクッと項垂れるジョンにシバは苦笑いをし、ゴミ箱を床に置いた。

「ジョンさん、僕は…」

「国王様!!」

シバが何か話そうとしている時に扉がバンッと力強く開いた。
少し扉が傾いた気がする。

「た、大変です国王様!」

「なんだ、そんなに慌てて」

正座をしたまま振り返り、部屋へ駆け込んできた黒いスーツ姿の部下を見ると顏が青くなっている。

「な、なんでシバ様の前で正座を…」

「気にするな。趣味だ」

「ジョ、ションさん!!」

キリッとした顏で答えるジョンにあたふたするシバ。

「それより用件を」

「は、はい!実はマルク国王が」

「あ、もう分かった。はぁ…下がってくれていい」

重いため息をついてジョンは立ち上がり、緩んだスーツのネクタイを更に緩める。

「シバお前はここで待ってろ」

「はい!ネズさんに宜しくお伝えください」

笑顔で手を振るシバに見送られながらジョンは国の入り口、入国保留所へと足を急がせた。





陸内の国は全部領土の外側に大きな壁に囲まれており、
国に入れるのは東西南北一か所ずつ設置されている。
入国時どこから来たのか入国証明書が必要となり、ない場合は入国保留所へ一時待機する事になっている。
国王から許可が下りるか、来た国から入国証明書を発行されるまでの間この場所でお客様としてもてなされている。

北側の入国保留所、見た目は豪華な旅館のような建物である。
ジョンは急ぎ足で暖簾を通り抜け、玄関のすぐ右側に立っている見張りに声をかける。

「マルクの国王が来たと聞いたが」

「はい!金鶴の間に」

「分かった。後でマルクの使者が1人来ると思うのでそいつも通せ」

「承知しました」

会話を終えすぐ近くの階段を上り2階、長い廊下を歩くと『金鶴の間』と書いた立札を見つける。
金色の襖を開けると、畳の部屋には似合わない金ぴかに輝くソファーに座るマルクの国王、ネズがいた。
白髪長髪、何十にも着物を重ね着し見てるだけで暑苦しそうな恰好をしている。…性格も暑苦しいが。

「おい、帰れ」

目が合うと同時にジョンはネズに声をかける。

「おいおいわざわざ来てやったのに」

「どうせ仕事が嫌になって逃げてきたんだろ」

「違う!俺はシバに会いにきたんだ!断じて逃げてきていない!」

その証拠に!と言わんばかりにソファーの裏に隠していた大量の紙袋を取り出し、ジョンの周りのキョロキョロと見渡す。

「それで俺のシバはどこに?」

「お前のじゃないし、アイツは仕事場で留守番中だ」

「何故だあああ!!」

ボトボトッと取っ手から手を離し紙袋が床に落ちていく。

「お前がくるのに連れてくる訳ねぇだろ」

「これでシバに会わなければチャレンジ9回目1か月4日9時間23分25秒も会ってない事になるだろ!!」

「いや、知らん」

ガシッとネズに肩を掴まれジョンの眉間に皺が寄る。

「あの可愛い顏が見たいんだよ!あの可愛い声が聞きたいんだ!あのふわっふわな髪にクンカクンカスーハースハーしたんだよ!」

「お前よく俺の前でそれ言えるな」

「いずれお義父さんと呼んでやるよ」

「死ね」

お互いの眉間に皺が寄りバチバチと火花が散る。

「第一シバと一緒に住んでるなんでずるいんだよ!」

「そりゃ保護者だからな」

「元は俺の国の!」

「こ、この馬鹿やろおおおおお!!!」

ネズが言おうとした時、空きっぱなしの入り口から男から飛び込んできた。
そして、ネズの頬へと一発ぶん殴った。

「フウタぶっっ!」

「国王!貴方って人はまた仕事を投げ出して!!私がどれだけ大変だったか!!」

殴られて床に倒れているネズの上に跨り、胸倉をつかむフウタ。

「入国証明書を国王の文字と似せて作成したんですよ!ばれたら逮捕です逮捕!それに城を出る時に大臣からまた『国王はまた逃走ですか。側近がちゃんとしていないから』と言われた私の気持ちが分かりますか!んん?!」

胸ぐらを掴んだまま力強く揺する。

「あ、あのもうその辺りにしといてやれ」

口から泡を吐くネズを見て、ジョンも冷や汗をかきながら制止を呼びかける。

「…ジョンさんがそういうなら」

命拾いしましたね、と呟きながら掴んでいた手を離すとドスッと音を立ててネズが床に落ちる。

「国王が今回も失礼しました」

ジョンに向かって深々とお辞儀をする。

「今回も逃走を許したのは私のミスです。いっそ死んで償います」

「いや、結構です」

本気の目で言っているフウタにジョンはブンブンと首を横に振る。

「そ、それより早くアイツを連れて帰ってくれ」

「そうですね。…ほら帰りますよ」

ぐっと着物の首元を掴むとズルズルと片手で引きずって部屋を出ていく。

「こ…今度はシバに合わせろよ!」

意識を取り戻したのか姿が見えなくなった後、廊下からネズの声とその後殴られたような音が聞こえた。



「…一気に疲れた」

重いため息をついて、ネズの土産の大量の紙袋を持って
部屋を出た。

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あきゅろす。
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