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2人の関係(高緑)



━━━それは、俺とあいつが
秀徳高校に入学して間もないころのこと。


「しーんちゃん」
部活後、秀徳に入ってからも欠かさずやっている
シュート練習をしているときに、
声をかけられた。
投げたボールの行方は、
シュッという音によって見なくてもわかる。
「なんだ」
「なんだって、なんだよー。つれないなー」
そうやって笑いながらも唇を尖らせるのは高尾だ。
なんでも、俺は帝光の時に
あいつをこてんぱんにしたらしい。
その因果か、俺に頻繁に声をかけてくる、
珍しい奴だ。
…はっきり言うと、うざい。
「そうそう、いつまでシュート練習
続けるつもり?
パス出したげよっか?」
「…ああ、頼む」
それからしばらく、体育館には
バッシュの音とボールの音、
それから高尾の声だけが響いた。



「おい、お前ら早く帰れ!」
いきなりの声に驚いたが、
なんともないようにシュートを決める。
「宮地先輩っ!」
高尾がほんとに練習後かと
疑いたくなるようなスピードで
宮地先輩に駆け寄る。
「…まだ残ってたんですね」
「ああ、ちょっと先生に呼び出し食らっててな」
俺もゆっくりとそちらへ行きながら、
宮地先輩に話しかけると、
先輩はこっちをちらとだけみて、
そう答えた。
「えー、先輩なんかしたんですかー?」
「ちげーよばか、轢くぞ」
などとじゃれ合う2人。
…………
ぐいっ
「うわっ」
「高尾、お前は馬鹿か。
先輩すみません、支度してきます」
すいませんっしたー、ねえ真ちゃん俺歩く!歩くから!
などとほざく高尾を引っ張り、
部室へ入る。
高尾の襟首を話したとたん、
「真ちゃんいきなりなにすんだよー!」
と猛烈に起こってきた。
「…うざい」
「は?」
「うざいのだよ」
聞き間違いかと目をぱちくりさせる高尾に、
今度ははっきり言ってやる。
「…は?なんだよ、急に」
「お前は俺に負けたのだろう?
なぜこうもまとわりつく。
俺にはお前が解せん。
はっきり言って、お前の行動は、
俺をイラつかせるのだ」
高尾という存在が、
ただただ自分のなかで不安定だった。
その気持ちをぶつけてやった。
それなのに。
「…はっ、分かったよ。
これからはお前に関わんねーわ。
いままですんませんっした」
そういってすぐに部室を出ていく高尾をみて、
心がざわついた。
これで、スッキリするはずだったのに。
違うのか?
俺のとった行動は、間違っていたのか…?


次の日から、高尾はほんとに
俺に話しかけなくなった。
ふと目があっても、すぐに何もなかったように、
そらされる。
せいせいした、これでいいんだと
自分に言い聞かせる。
今日もシュートは入るはずだ。
俺は人事を尽くしているのだから。


それから一週間、
何事もなく過ぎた。
あったことと言えば、
先輩に何度か高尾となにかあったのか、と
聞かれることくらいだった。
いえ、別に。
その都度そうは答えたが、
もやもやの答えは出なかった。


それから2日後、運悪く。
高尾と、鍵当番に当たった。
「…俺、倉庫みてくる」
「…ああ」
気まずい雰囲気が流れた。
俺は高尾に背を向け、
モップなどの点検をしにいった。
特に何もなく、
なんとなく上の空で、
モップのおいてある倉庫を出ようとする。
そのとき━━

ガンッ

それが何の音か分からないまま、
ただ分かったのは、
自分の上に何かが落ちてくるところだった。
思わず頭を守り、しゃがみこむ。
何度かの衝撃が腕に伝わり、
やがてなくなった。
閉じていた目を開けてみると、
ぼんやりしていたときにひっかけたのだろうか、
立て掛けてあったモップのほとんどが
自分の上やまわりに倒れ、落ちていた。
状況が少しつかめずに、ぼうっとしていると、
「おい、し…緑間!大丈夫か!?」
ものすごく焦った様子で、
倉庫に駆け込んできた。
「たか…お…」
「怪我とか無いか!?今そこから出してやるから!」
そういって、俺のまわりのモップを
手早く片付けてくれた。
「…緑間、大丈夫だったか?」
「…ああ。助かった。すまない」
「別にいーよ。それより何でこうなったんだ?」
「…分からん。たぶん足かなんかをひっかけたのだろう」
「そっか」
そして、背中を向ける高尾。
なぜだかわからない。
けど、自然と口が開いていた。
「高尾。シュート練習に付き合ってくれないか」
驚いたように、高尾がこっちをみた。
いや、俺も同じように目を白黒させているかもしれない。
「あ、いや、別に嫌だったら、いい」
なんであんなことを…。
一刻でも早く立ち去りたかった。
「いいぜ」
「…ボールを持ってこよう」
「いや、俺行くわ」
そう言って、ボールの倉庫へと走っていった。
本当にわからない。
あれだけ言ったのに、
まだこいつは…
その先の言葉が見つからない。
ただ、高尾の返事に胸を撫で下ろした自分にも
不思議に思った。
「緑間ー」
ボールを持ってこっちへ来る高尾を目にとらえ、
今は集中しようと
余計な雑念を振り払った。


それから30分ほど。
「…緑間、さすがにそろそろ終わった方がよくね」
「…そうだな」
みると、いつの間にか部活が終わってから
まるまる一時間たっていた。
それから手早く支度をし、
鍵を返した。


帰り道、方向が一緒なので、
同じ道を歩くことになる。
ただ、今の微妙すぎる関係では、
沈黙が流れるだけだった。
「…緑間」
沈黙を、高尾が破った。
「…なんだ」
「なんであのとき、あんなに怒ったんだ?」
それだけ、教えてくれよ。
その頼みに、俺は、
「…わからない」
そう答えるより他なかった。
「はあ?」
わかんないって、なんだよ。
ブハッと高尾が笑いだす。
「…フンッ」
「あ、機嫌損ねちゃった?緑間」
なおも笑いながらごめんってと
謝ってくる。
「…気持ち悪いのだよ」
「…は?」
「その、緑間と呼ぶのが、
気持ち悪いのだよ」
しばらくキョトンとして、
それから盛大に吹き出す。
そして、爆笑しながら、
「仰せのままに、真ちゃん」
と、前のように。
ただ、自分の中に前とは違う、
新たな感情も流れていた。
「…フンッ」
「なあ、真ちゃんってツンデレ?」
「…うるさいのだよ」
「はいはい」
以前のような、関係。
てだ、2人の間に流れるものが、
少しだけ変わった。
俺の中のもやもやは、
依然としてある。
けれど、今のモヤモヤは、
嫌いではない気がする。



その正体を知るのは、また先の話━━━━



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あとがき


おひさです!
更新するとか言って結局してなかった春花です。
ダメな奴ですw
とりあえず、いろいろ重なって
忙しかったという言い訳だけしときます←

この話は、書いてて
すごく楽しかったです。
たぶん、高尾視点、
それからもう一人別の人の視点で
書いてみようかなと思ってます。



では、だいぶ遅くなりましたがw
あけましておめでとうございます
今年もどうぞよろしくお願いします!

ひな




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