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main1 gintama
その声で



部屋の障子を開けると、
心地よい風が頬に当たる。
これで仕事がはかどりそうだ。
紙に筆を走らせていると、
ドタバタとこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。
誰かなんて、確かめなくても分かる。
この足音の主は…
「土方ー、逢いに来てやったぞー!」
「残念ながら仕事中だ」
やっぱり、俺の大好きな天パだった。
「むー……たまには仕事なんていいだろ」
頬を膨らませ、
ちょっと不機嫌そうな顔でこちらを見つめてくる。
ダメだ、可愛すぎる。
「……今日だけだからな」
筆を置き、改めて銀時のほうを見る。
すると、花が咲いたような満面の笑みだった。
可愛くて、ついつい目を逸らしてしまう。
「で、なんの用で来たんだ?万事屋」
「それだよ!」
いきなり俺に詰め寄ってきて、
深刻そうな顔をする。
「お前、なんで俺のこと
『万事屋』って呼ぶんだよ」
「それは……」
恥ずかしいから、なんて言えない。
「俺には『坂田銀時』っていう名前があるの!
坂田って呼ぶんならまだしも、
万事屋ってなんだよ!
俺たち付き合ってんだよ!?
銀時って呼べよ!!」
また口を開こうとした銀時を、俺の唇で止める。
「な、なんだよいきなりっ」
「さっきから黙って聞いてりゃ………
名前で呼ばないのなんてお前も一緒だろーが!
俺のこと、十四郎って呼んだこと一度でもあったか!?」
そうだ。
コイツだって俺のことを名前で呼んでくれない。
「そんなに名前で呼んでほしいなら
いくらでも呼んでやる!
お前のためなら、何回でも……
ぎ、銀時って呼んでやる!
だから俺のこともっ……
ちゃんと呼んでくれ……」
お前だからこそ呼んでほしい。
その声で………十四郎って。
銀時はいつの間にか耳まで真っ赤になっていた。
「分かった……俺も、ちゃんと呼ぶ。
と、とー………し、ろー……」
「聞こえないなー。はい、もう一回」
本当は聞こえたけど、
こんなに可愛い顔されたらいじめたくもなる。
「とう…しろー……っ」
「なに下向いてんだ。
俺の顔見て言え。もう一回」
「十四郎っ!」
「早口で聞こえなかった。もう一回」
「だぁぁぁぁっ!!
てめぇ、絶対聞こえてんだろ!
恥ずかしいからもう勘弁!」
そう言って、
真っ赤な顔のまま部屋を飛び出していった。
「ちっ……もう少し言わせたかったな」
でも、十四郎と言ってくれたことは嬉しい。
ついでにいじめられたし、
今日は良しとするか。
俺は火をつけた煙草を口に咥え、
再び筆をとった。



END



〈あとがき〉

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は土方目線で書いてみました。
名前で呼び合うのはいいですね。
私は中学のときはみんなに苗字で呼ばれてましたが、高校では名前で呼ばれるようになりました。
嬉しかったですね。
でも、私の中では互いのことを土方は「万事屋」と、銀さんは「土方」と呼ぶのが一番しっくり
きます。
この微妙な距離感?がいいと思います。
それでは、またいつか!



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