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〜神話W〜 巨人族たちの反乱
 シーレンがいなくなったことにより、水を司る権限は末っ子のエヴァへ移された。
 しかし、生来臆病な性格であったエヴァは、姉の壮絶な反乱劇を目の当たりにし、すっかり怖気づいてしまったのである。
 水の神という重大な責務から逃れるため、彼女は湖の底に洞穴を作ると、そこに隠れてしまった。支配者を失った水は暴走し、物質界では水の枯渇や洪水などの水害が発生する。これに困った巨人族たちはアインハザードとグランカインに懇願し、二人は世界中をくまなく探すとついに洞穴からエヴァを見つけだした。エヴァが引き起こした水害により死に絶えた生物の多くが、シーレンの支配する死の世界へ送られたことにアインハザードは激しく嫉妬し、エヴァを叱咤すると二度と責務を放棄しないよう約束させる。

 こうして世界では水害はなくなったものの、世界には混乱が続いた。鬼神達の反乱、エヴァの責務の放棄、さらにはシーレンの力の一部が具現化し、死の川から物質界に現れる魔物達の被害などを目の当たりにした巨人族たちは、次第に神々に対し失望していった。

 ちょうどそのころ、巨人族の間では魔法科学が発展し、信仰心を失い始めた巨人族たちは神々への反乱を企てる。巨人族たちが神々に対抗するため、キメラ生物を創造し、軍隊を組織しはじめたのだ。

 現在、パヴェルの遺跡に残されている巨人族たちの遺跡は、その時の研究所だと考えられている。

 これを見たアインハザードは『生物の創造』という神の領分を侵したことに激怒し、巨人族もろとも大陸全土を破壊することを宣言した。しかしグランカインの必死の説得により、巨人族たちの都市を破壊するに留めることにしたアインハザードは、グランカインから『星の槌』を借りると、その都市に振り落としたのである。
落ちてくる火球を見た巨人族たちは、自分達が過ちを犯したことにようやく気づくもののどうにもならず、全力で星の槌をそらそうとしたが僅かに軌道がそれただけで都市は崩壊した。この大災厄により、多くの生物と巨人族が死に絶えたのである。

 生き残った巨人族たちを、アインハザードは追撃し、一人ずつ雷で焼き殺していった。
 巨人族たちは神々に懇願し許しを請うと、寛大な神であるグランカインはアインハザードを説得した。同等の力を持つグランカインの言葉を無視するわけにもいかず、アインハザードは引き下がると、以後、天上から出ることなく地上への干渉を控えた。地上の生物に絶望したためである。グランカインもまた、世界の均等を保つため、地上に姿をみせることはなくなったという。

 こうして生き残った巨人族達は、アインハザードの手から守るためグランカインが作った高原に逃げ込み、そこで自らの愚行を悔い続けながら生きたのである。

 現在はかつての巨人族は滅び、その遺跡や遺物のみが残っているだけだ。ただし、シュチュッツガルトの冬の迷宮や、水の都ハイネスの周辺に、退化した巨人族が生き残っているが、そこにはかつて種族の長としての面影はなく、本能のまま動くモンスターと化している。

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