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原作
その忠誠に懺悔を(獄つな十年後)

 獄寺君は、俺の優秀な部下だ。

 頭がいい事も、中距離戦に長けている事も、複雑なマフィアの世界を生きていた事も、俺に絶対的な、ある種信仰に近い程の忠誠を誓っている事も、全部含めて。
 獄寺君は、優秀過ぎるくらいの部下だ。


「ねぇ、獄寺君」

「なんですか、十代目」

「俺は、いつから十代目になったんだろうね」

「?ボスに就任したのは、半年前です」

 不思議そうに獄寺君が答える。
 スケジュール確認に来た彼は立ったままだったので、俺はソファに座るように命令した。

「そういうのじゃなくてさ。あ、でも、それも含めてるのかな。・・・・・単にね、いつからだろうなって。俺が、ボンゴレになったのは」

「・・・・・・?」

「いつから、俺はマフィアになったっけ?」

 責める訳でもなく、問いかける訳でもなく、ただ、自分に言い聞かせるかのように呟く。

「いつから、このスーツを着るようになった?いつから、銃が手に馴染んできた?いつから、イタリア語が分かるようになった?いつから、っ血の臭いが消えなくなった?いつからっっ?!!」

 俺は息を切らしながら、強張った獄寺君を見詰めて、問い掛けた。

「いつから、俺は、人を平気で殺せるようになった?!」

「十代目・・・・・」

 獄寺君は、まるで、自分自身が苦悩したかの様に顔を歪めた。彼の膝の上に置いていた手が、小さく震えていた。
 彼に対して、申し訳ないと心のなかで謝りながらも、俺は喋り続けた。

「・・・・・・最近さ、考えるんだ。もし、俺が結局、ボンゴレに入らないで、リングとかも受け取らないで、本当に平凡な生活を続けてたら、どうなったかって」

 自分でもわかっている。それは有り得る事のない想像でしかないと。

「・・・・・たぶん今でもダメツナって言われて、もしかしたら彼女とかも一人も出来ないかもしれない。そもそも、なにかドジって、事故にでもあって死んでるかも」

 『たぶん』『もしかしたら』『かもしれない』それは本当に、虚しい夢。

「獄寺君にも山本にも、会えなくなったかもしれない」

 君達は俺を置いて、遠くを歩いていく。

「ははっ、もしかしたら、二人が俺を暗殺しに来るって事も有り得たかもね」

「っ十代目・・・・・」

 だって、結局俺は、ボンゴレに囚われているから。非公式でも、ボス候補に上げられていた俺は、『やっぱりボスになりません』だけでは済まされない。

「別にさ、後悔してる訳じゃないよ」

 自嘲気味に笑うと、獄寺君は俺から目をそらした。
 そういえば、以前はもっと屈託のない笑い方が出来ていたかもしれない。


 俺は、変わってしまった。


「・・・・あなたが、どうなろうと、俺はあなたの右腕です。永久に」


「俺が、ボンゴレではなかったら、君とは出会わなかったよ?」


「ですが、あなたは此処にいて、俺はその傍らにいることが出来る。」

 彼の真っ直ぐな眼差しは、昔から変わらず綺麗だった。


「あなたがいない人生なんて、俺はいりません。」


 君は、本当に優秀な部下だね。

 「その言葉が聞きたくなった」、なんて、絶対に言わないけれど。







 その忠誠に懺悔を



来ました。よく分からない獄つな。
 最初は「よし!十年後シリアス」→「やっぱ獄ツナかな」→「なんか、獄を困らせたい」→なんかノリで→話が脱線。しかも、これってツナ獄じゃね?
 よくあります。すいません。

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