フラれた。
そう爽やかに笑って言う友人に比べて、当事者でもないのに動揺する自分が恨めしい。
「……フラれたって…獄寺君に?」
恐る恐る聞けば、快活な友人は驚いたように笑った。(彼はよく笑う人だ)その顔には「よく分かったな」そう書いていた。
「俺、そんなにわかりやすかった?」
「いや、……いつも三人でいるから、…何となく。」
何となく気付いて。でもどうしようもなかった。
「『雲雀が好きだ』…ってさ、言われた」
「………」
「『雲雀が好き』………」
確かめるように呟いた山本の横顔は淋しそうだった。いや、悲しそうでもあった。いろんな哀しさが混ざった表情をしていた。
「雲雀さんが好き……」
俺も合わせるように呟いた。だが、それは凄く残酷な事だと気付いて眉を寄せた。
「獄寺のさ、特別になりたかったんだよな〜」
あ〜あ、と山本は伸びをした。俺は少し俯く。
「でもさ、獄寺の特別は雲雀なんだって」
「……獄寺君も片思いだよ?」
「ツナ、よく知ってんな〜」
知ってるよ。雲雀さんが好きなのが俺というのを含めて、よく知ってる。
「君は特別だから」と、山本が獄寺君に告白した昨日、俺は雲雀さんに言われた。
「……獄寺君の事さ、諦めるの?」
顔を上げて聞けば、山本の顔は少し強張った。眉を苦しそうに寄せて、涙の膜を張った瞳で俺を見返す。
「諦めないぜ、俺」
にかっと笑って言い切る山本に、俺の胸はキリキリと痛んだ。それでも無理矢理笑顔を作る。
「そっか」
「うん。獄寺の事、ホントに好きだから」
「……そっか」
「延長戦になるね」と言えば、山本は「俺、得意だぜ、ソレ」と笑われた。
「もしくはシーソーかな……」
一番愛が重い人が深く堕ちていく。
「どっちにしろ、俺は諦めねぇよ」
「諦めねぇ〜!!」と山本は叫んだ。と言うか、大きな声で言っただけだった。でも、それは叫びだと俺は思ってしまう。
「山本が好きだ」と叫ぶ事すら出来ない俺は、ただ深く堕ちるだけ。
シーソーの先。
いっそ軽い想いの方が楽になれた。
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…………
ごめんなさい。