獄寺君は本当に綺麗だと思う。
別に変な意味じゃとかじゃなく、何となく『綺麗だな』と感じた。というより気付いた。
ハーフだかクオータだかで授かった、銀の髪と碧の瞳は光の角度で輝いて眩しい。
女子は不良っぽいとこもカッコイイと騒ぐけど、俺にはものすごく礼儀正しいからその魅力はわからない。
『今日は山本、部活だから二人で帰るの久しぶりだね』
『野球馬鹿は朝から晩まで野球してりゃーいいんすよ。てかむしろ死ね』
『し、死ねはちょっとダメだよ・・・・』
黙ってれば王子様なんだけどなぁ。やはり顔と頭がよくても、性格は大切だ。そこらへん、神様はけっこう平等ならしい。たぶん彼は外見(+頭)と中身がプラマイゼロにできているのだ。
『へっあんな奴、殺したって死にませんよ!!』
獄寺君・・・・そんないい笑顔で・・・・・
ニカッと笑う獄寺君に脱力する。それでもリアルに頭を抱えていた以前と比べれば、かなりの進歩だ。凄いゾ!俺の順応力!!
『・・・・・まぁ山本、元気だからな〜。俺なんか、ひょろいから風邪とかでもなかなか治んないんだよね』
『十代目はひょろいんじゃなく華奢で繊細なんです!!そしてお風邪をおひきになった時は俺が治るまで寝ずに看病します!!!』
『・・・・・・』
正直、華奢とか繊細とかは、男にとってひょろいと同義語だ。むしろ女々しさもプラスされてる気がする。
それでも真剣に、こっちが逃げ腰になるくらい真剣に訴えてくる姿に少し感動した。
そしてふと思った。
『綺麗・・・・』
『は・・・・?』
『獄寺君て綺麗だね』
そうやって微笑むと彼はうっと呻いてしゃがみこんだ。
『えっ、大丈夫?!』
『・・・いえ、大丈夫です・・・』
お気になさらずと言う獄寺君の顔色が、青いというより赤かったので、とりあえず気分が悪くなった訳ではなさそうだ。
『・・・・先に行ってるよ』
それでもなかなか立ち上がれないらしい獄寺君を置いて、俺はてくてくと少し早足で歩き始めた。
『えっ待って下さい、十代目ぇ!!』
忠犬のようにあとを追い掛けてくる彼の姿に苦笑した。
綺麗だと思った。
彼の珍しい容姿に対してではなく、潔いその姿に。
真面目で、すごく一途な性格に。
本当に、俺には勿体ないくらいの忠犬。
すぐ後ろで『十代目』と俺を呼ぶ声がする。心なしか涙声だ。そのぶんだと碧の瞳をうるうるさせているいるんだろう。
俺は愛すべき我が駄犬に笑顔で振り返った。
我が駄犬