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Trap-1

「凡ゆる限りの問いに答えるのは、余りにも長くなってしまいそうです。結論から述べましょう、この人数で、戦いを挑むと言うのは…」

満面の笑みと、冷たいオーラが漂う。それには、分かりきっていたかのように、白蓮、夢、ひより は、己の耳を手で塞ぐだろう。黒蓮と紅蓮は、3人の行動にキョトリとして、Romeの言葉を食らう。

「不様に死ぬ前に逝かせてあげましょうか(はぁと)」

何回聞いただろうか、このストレートな言葉を。そして、実行しでかそうとするのも事実だ。それもその筈、紅蓮を率いる軍隊の人数が3人を含めて、5人と言う数。つまり、紅蓮と黒蓮を含めての5人。
何故かを話せば、Rome達が来る前の数時間前、紅蓮が戦士達を集めて、言葉を下したのが始まりなようだ。「御前等、恐らく死ぬと思う。だから消えんな」…何て直球な言葉何でしょうか。黒蓮は、思わず呆気に言葉も出なかったようでした。そして、戦士の皆は「付いていきます!」と全員が言葉に出した。それだけに紅蓮とは親しまれている者だと言うのが分かる。執念に申す戦士達に「俺に、一人でも勝てる奴がいたら、考えてやる」と言って、五千人前後が太刀打ちし… 誰一人と紅蓮に勝てる者がいなかったという。紅蓮はと言うと、傷一つも無く、ヘラリと笑っていた。戦士は、立ち去っていくものもいれば、立ち去れない連中もいた。命と家族を考えろと言った紅蓮の言葉に対しても離れずにいる。何より、紅蓮の攻撃で、骨の一つや二つなど当たり前の状態であり、この状態で戦場に立たせるのが、邪魔にしか成らない可笑しな話。逆を問えば、五千の者が、紅蓮一人と戦って、勝てなかったと言う意味では、いらない者と結論付ける事も分かる。

「…なぁ兄貴、確かにアンタのやった行動は馬鹿だと思う。でも、俺がリーダーであっても、恐らく、そうしてた」

説明の後に、スッと白蓮が言葉を入れて、紅蓮に目をやった。此処から離れる前の白蓮とは、随分と落ち着きがあるようにも見えたらしく。その様子に「変わったな」と紅蓮は言葉を返し、黒蓮は無言で頷いた。

「ちょいと前までは、俺も、人数気にしてたってもんだ。アンタに教えて貰ったんだぜ、羊」

一瞬、でも今の言葉にRomeが、何か態度を出すだろうか?と思ったが、そんな様子は全く無かった。それ所か、Romeの頭の中では、更なる戦闘態勢について、考えを出そうと、脳内速度がフル回転しているであろう。黙って白蓮は、黒蓮に目を向けて、ニィっと笑い何らかの合図を与えた。

「まだ時間はありますし…お連れの者達も長旅で疲れておいででしょう。今日は休まれては如何でしょうか?」

こんな中でも、落ち着いて、言葉を掛けられるのは黒蓮の性格があってであろう。昔から、その姿は変わっていない。黒蓮の言葉に、ひより と夢が立ち上がり、席を外す。「案内します」と言葉に出して、黒蓮も席を外した。紅蓮もまた、「一っ風呂浴びる」と離れて、残ったのは、Romeと白蓮の二人。

「面白いもんだな、有ると思ってた物(兵士)が、無いんだからさ。でも、こうやって、焦りが無いってのは、どうして何だろうな」

ふぅ、っと白蓮の言葉に、Romeの口元は緩まる。肩を落として、椅子に凭れるように崩し、片足立たして、抱える。

「気付いていましたか。」

「数ヶ月の間だけど、これでもアンタを観察してるつもりだ。何か、すっげえ、楽しそうだな羊」

「敗北を前にするゲームを、どのように動かして、勝利を手に入れるのか。それを考える時間が、好きなだけです。人からすれば、残酷で、無謀にも見えますけど」

「それが、楽しいって思える余裕ってのが、今の俺達には必要なんじゃないかね」

「おや、言うように成りましたね」と、クスクスと笑った顔を出し、目を細めた。無言の間に、何故か、落ち着きが見える二人。そっと、手に被さるもう一つの手に、Romeが白蓮へと目を向て、払い除ける事無く、そのまま触れさせている。

「あの、さ」

その言葉の後に、続く物が無かったのは…



* * * * *



「コチラが風呂場、そして食堂、アチラが自分の能力に敵する修業場となっております」

道案内も終盤に近い。「ありがとう」と言葉を掛けると同時にだった。深い、殺気が夢とひよりの二人を包み込む。分かってはいたが、此処までもキツイ殺気を出すとは想像以上の物である。

「…貴方達の強さや、馴れ合い等に興味はありません。ただ、あまりにも不躾な事を感じましたら、遠慮無く…」

「同感だな、俺と夢も、誰一人として信じてる訳じゃないよ。信頼、身内、そんなもんは、ただの飾り道具に過ぎないからね」

張り詰めた空気が、夢、ひより、黒蓮の三人を包みこむ。ピシリと壁にラップ音を立たせて、空気中の物がパラリと崩れた。ポルターガイスト、その現象に近い。この能力は、ひよりが発してる物であろう。念や、サイコキネシス、何かを強く念じた事が、自分の気持ちで現れる、そんな現象。

「ハイハイハイ、良いね、そのバチバチ感じるくーきってやつ?でも、此処で何かされたら困るんだよね、お兄ーさんはさ?」

軍服を崩した姿で現れた紅蓮に、夢とひよりは、更に気を引き締めた。ハァーっと熱い息を零して、髪を掻き上げる紅蓮と、沈黙状態の黒蓮には、何を考えてるのか分からない状態で、夢とひよりはいた。

「まー、そんなピリピリすんなって、空気荒れても、たった5人しかいないのは変わんねーし」

「…誰かがいなくなった所で、差程、変わりはありません…と言いたいのですね。」

空気が緩む。その緩んだ空気の途端に、黒蓮とひよりの腕を紅蓮が掴み、手を握らせた。無言のまま、ひよりと黒蓮の二人は握った状態になり、二人は紅蓮を見やる。

「大切なのは、裸の付き合い、んじゃ、白い二人も風呂場に呼んできてくれな?一緒に背中を流そうぜ?」

「(兄貴が言うと、何か…卑猥だ/黒蓮)」

「(眠いのに…/ひより)」

素直に頭を下げた二人がまた、紅蓮を笑わせる。素直なんだか、プライドが高いんだか、分からないな?と言いながら、夢と風呂場に足を進ませた。素っ裸になり、腰に巻くタオルをセットし、夢に目を向ける紅蓮。しかし、服を脱ぐ事が無く、ただ 無言で佇んでいる夢に声を掛けるだろう。

「どした?」

言葉に振り返り、真っ裸(タオルは巻いてる)と成っている紅蓮と目が合う。漆黒の瞳は、光が消えて、黙ったままでいる。目の前に手を掲げても、夢の反応は無く、次には肩に手を掛けた。


ズシャ … ガガガガ…


紅蓮の笑い声と共に、親指と人差し指の間から、真っ赤な色が渋きとなり、飛び散る。しっかりと掴んだ刃に、勢いよく、壁に傷を付けるような形となり、刃先により、首から肩の着物が切れて、夢の肌が露となるだろう。そのまま、夢の左手に流れるように押さえ込み、と同時に、首筋へと舌を這わせた。

「危ねぇな、綺麗な肩を傷物にする所だったぜ?アンタ、自分の体にも容赦無く、牙を突き付けるってのは、無駄な行動ってもんだと思うよ。(勢いは褒めるけど)」

這わせた舌の感触に、ビクリと体をさせて、一息零す。紅蓮もまた、首筋から鎖骨に向かう間にある痕の姿を見ては、口端を吊り上げ、わざと、その痕に口を宛がい、痕の上から吸い付く。

「あの、ひよっ子の臭いがするな…何だ、出来上がっているのか?澄ました顔をしてるから、そんな経験は無いと思ってたが…」


* * * * *


無言のまま、手を繋いで二人は、先程の全員が集まっていた部屋へと足を進ませていた。手を離す機会が無かったのか、ズルズルとそのままに手は繋がれており、互いに何を考えているのか全く分からない。紅蓮が、この5人が全員、仲良く仕向けたい気持ちの事で、自分と黒蓮に、二人を呼びに行くようにと指示したのか?と言う事。を、ひよりは少し浮かばせていたようだ。残された夢の事を考えているのもある。夢と紅蓮との接点は無いに等しいと浮かばされてはいるが。しかし、先程から感じる引っ掛かりが消えない、これが何なのかと。黒蓮へと目を向けて、眺めるが。

「…」

気付いている黒蓮も、無言のままにいて、ただそのままに歩いて行く。部屋に近付きば、扉をそっと開かせて、Romeと白蓮の様子を二人は見つめると、更に無言の延長となるだろう。



−Next(10/08/11更新)



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あきゅろす。
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