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strategy meeting-6
心の声が読めなくなっている。普通の人物ならば、それは普通の事。読もうと思うよりも、およその考えで相手を探り入れるような形で行動する事はあったとしても。しかし、ひよりの場合は、的確な物を当てる程に確実な物。エスパーの使い手である彼には、それが出来て当たり前だと言う事。

『何度も試してみた。だけど、読めない』

何故、読めなく成ってしまったのか。浮かび出されるのは、Lunaticの能力による物にしか思えない。修業を熟し終え、4人が再び顔を合わせたのは、この話を、ひよりがRomeに出してから、丁度一ヶ月がたった時である。

ひよりの様子は至って変わりは無い。LunaticとNoirとの別れの時が来た。世話になったと言わんばかりに、夢は丁寧に頭を下げて、白蓮も少々 物足りないような気持ちで別れを告げる。

「お二方、とてもお世話になりました。これを活かして、僕達は、戦場に向かおうと思います」

「嗚呼、くれぐれも無理では無く、無駄をせぬようにな?」

白蓮や夢に、釘を刺すようにNoirは低く笑いながら告げる。そんな様子をRomeが眺めて、何時もならば、嫌味を受ければ、行動に出す二人も、言葉だけで返すようになっていたと感じ取る。成長したと言えば、したのだろう、維持する心を。…そんな中、ひよりは。

「Lunatic、俺はどうすれば良い?まだ何の答えも見つからない。」

頭に抱える事をしない、彼らしく言葉を、素直にLunaticへと出す。Lunaticは ひよりの頭を優しく撫でて、額を近付けた。

「私がした事に対して、余計な事をしたと思っているなら、そこに貴方の欲が見える事になります。わかりますか?」

「…思ってるよ」

「…」

「何で…こんな事したんだ!」

普段、大きな声で 怒鳴ったり、感情を露にしない彼を見れば、三人は少々驚いた様子を見せるだろう。泣き出しそうな、そんな顔をしている ひよりに、そっとLunaticは頬に手を添えた。抱え込み続ける様子が分かって無かった訳でな無いようだ。

「貴方に損を与える力を、私は与えた訳ではありません。これが、普通の事だと言う事を、理解出来た時、花は砕けて、新たな花が貴方の力になります」

「……わからない、理屈なんて…」

「焦らずに、どうか…」

すっ と離れて行く。ひよりは黙ってしまい、俯いたままでいる。何が答えなのか、何が間違いなのか、何が正しいのか… その繰り返し繰り返しを頭の中でグルグルと回転し、これは、此処最近の俺がしてる事だと、小さく呟くだろう。

「少々、お前は賢いようだな。アイツ等を見習ってはどうだ?」

賢い事に、何がいけないのか。Noirの出す言葉の意味が理解出来ずに、また、さっきの考えを何度も考え続けている。


浮上する彼等を見つめて、残る4人と再び戻る。2人が来る前の彼等と、今の彼等とは、少なからず何かが変わっていた。話す内容、考え方。何よりも、自分の意志を告げる事。自分達は、個別の存在では無く、揃って行動すると云う事に身についたようにも見える。一人を除いては。

「やけに、あいつ等強かったけど…結局の所、何者なんだ?戦争の仲間になるって思ってたのに、行っちまったし」

「おや、申してませんでしたか?」

Romeの悪い癖だ。大事な事をいつも後からにより、言葉に出す。それが、わかっていながらも、今回の出された物には、白蓮も一言Romeの言葉を復唱し、口が塞がってしまった。

「全、天使の長と悪魔の長だと…」

「えぇ、禁じられた恋の話しをしましたが、あれには続きがありましてね。二人は頂点と成ったものの、天使と悪魔という、前代未聞の恋を始めます。それにより、天使と悪魔の戦争が始まりました。それはもう…天界、下界の荒れた世界を戻すのは大変な事だったと、古い書物に書かれていました。数百年と続いた戦争でしたからね。その戦争を止めたのも、NoirとLunaticという事になりますね。結果、天界からも悪魔の世界からも二人は追放の身となり、最大の力を持つ彼等であるのは確かな話しですが、長としてはあるまじき事だというのは事実…。長の位は取り上げられたが、彼等よりも優れた者が未だに現れず、彼等が最高位の天使と悪魔だというのは、理論上ではあります。今は、彼等より古い先祖が、いなくなり、批判する者すら出なくなって、かなり緩さを感じるルールとなっていると言いますが…」

馬鹿げた話しであると思った半面、恐ろしい程の繋がり、そして、勝ち抜いた結果が見えると思ってしまう。そして、縛られない今が彼等にあるとすれば、それは凄まじく、歴史を変えたようなものだ。そして、それが事実だとすれば、Romeが どうやって、この二人と出会ったのか という事も疑問にはなる。いえ、それ以前に、長を呼べる存在を、Romeが簡単に呼び出せるという事が、さらに恐ろしく感じる。

「長って事は、俺等の起こそうとしてる戦争も耳に入ってるって事か…?」

「正直な話。彼等にとっては、その戦争等、兄弟喧嘩ぐらいにしか思っていないでしょう。反面、止める要素も無いと云う事。その意味は分かりますか?」

「くだらねぇって事か?」

「いえ、この道程を越えれば、新たな物が見えると、彼等は申していました。」

「もう、結果が見えてるのか?」

「いえ、違います。彼等は、経験を手に入れ、現世にいます。だから、その気持ちを、僕達にも、受け止め、強く進む事を押しました。」

「勝つって事?」

「それとも違う気が、僕にはします」

目を閉じて、また開かせた世界が違うように、僕達はまだ、目を覚ます事すら出来ていないのかも知れない。そう心の何処かで思っていながらも、上手く気付く事が出来ないもどかしい気持ちでもありながら、ニッコリと空に笑って見せた。

「さぁ、紅蓮さんと合流しましょうか」



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あきゅろす。
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