strategy meeting-2
『そんな証拠は無い』
『僕は、Zenに作られたHomunculusでもあります。怒れた玩具(薬)を何度も飲み込み、現世にいる…と言っても過言では有りません。共に、道を歩き進み…『もしかして、貴方はZenを食った』…そう思われても仕方が無い事をしたのは確かです』
『…』
殺す事等、簡単でした。仕事に関して、失敗等すれば、首が吹っ飛ぶと言う事も分かっている。もう既に、自分の行動等、時間が崩れて、裏切りとなり、僕は抹殺される運命。だけど僕は、この 白い少年に、興味を持ってしまった。Zenの事や、原点等とは違う。もっと 特別な物。
そう、この人も、僕と同じ、作られた人形だと言うこと。
興味が あった。僕のように考えて、動き、人間らしく接すると言う事を。ただの戦闘機等いくらでもいる…器だけの、そんな人形。意思を持った、そんな者だから、閣下は僕を気に入ったのかも知れない。
裏切りでも何でも良い。選んだ行動に、もし、誤りがあって、抹殺されるなら、それは僕が間違った行動だったのかも知れない。
「随分、人間らしい考えをしていますね」
この裏切りの事について話すと、彼そう、言ってくれた。Siaをあやして、育てている彼を見ていると、何だか不思議なものを見ているような気がした。まるで 生き物を育てているように見えた。
「そんな道具を育てるなんて、変わっていますよ、貴方」
「おや、この子達は生きていますよ。素晴らしいとは思いませんか?呼吸していて、思うように動き、泣いて、笑ってくれます」
道具(Sia)と、我々と同じだと、彼が言っているようにも聞こえた。僕とSiaとは同じ事を意味する?道具…嗚呼、命令されて、その通りに動く事しか出来ないものなんて、道具にしか…。
「生きてる…」
「あ…はい」
「これから、この子達は、どんな事を考え、どう生きて行くのか、楽しみですね」
「野放しにするのですか?」
「そうですね、何れ、親離れするのは、大切な事ですから。」
親…。
あれから一ヶ月半と言う時が過ぎた。Romeは、この研究所のあらゆる機械を扱いながらも、Siaを育てている。日記を眺めると、Siaの事を事細かく書かれていた。その細かさに、また、どうして 道具に?と、頭を浮かばせてしまう。
「Velma、夢が泣いていますので、あやしてあげてくれませんか?」
「夢?」
あれから随分と成長した。言葉をつかい、はしゃぐSia達の成長には、驚きが隠せれない。僕達と同じように喋り、行動する。
「Velma?」
「あぁ…」
抱きしめてやる。すれば、更に大きく泣き出してしまった。ため息を吐いて、Romeは近づいて来た。Siaをそっと抱き寄せて、背中をトントンと叩いている。ふわりとした 優しい笑みが見えた。Siaは泣き止み、うとうととしだす。そして、Siaを再び、渡された。
「あ…」
「温かいですよ、とても」
「うん、」
生きてると言う実感。息をしていて、耳を胸に近付ければ、小さいけど鼓動が聞こえる。
「生きてる」
「えぇ、生きているのですよ」
どうしてこんなにも、胸に込み上げる物が熱いのだろうか?Romeの言葉か?それとも、Siaに対しての何かに芽生えたのか?分からない。ただ、ドクリと何か熱い物が胸に流れたような気がした。
「熱い」
「熱いですね。恐らくですが…この感情が「愛」なのかも知れません」
そう言葉したRomeの顔は、少しばかり複雑な物を感じた。こんなにも、苦しくなる物でいて、そう 「愛」しいと感じる事が、まだ、僕達には分かっていないのかも知れない。
月日は流れて、二ヶ月半。子育てをする事が日常となり、研究も熟している。
時々来る刺客には、問答無用に太刀打ちをする。しかし、その刺客達に下す手の赤色を後で眺めると、こんなに熱い物だったか?と、思うようになった。道具が何を考えているんだ?この行動は、誰かの指示でやってるんじゃないか! …誰か?…誰に?
「ねぇ、僕に命令したは誰でしたか?」
「おかえりなさい。命令?」
「殺しの」
「……いえ、誰も」
「いや、Romeが研究に必要な花をと」
「えぇ、夢と月に必要な食料に成りますので、摘んできて下さいと」
「じゃあ、貴方が」
「…え?」
違うとは、分かっている。ただ、Romeは「花を摘んできて欲しい」と頼んだだけ。
嗚呼、そうか…教え込まれ、身についてしまっていた、この生き方に、僕はシンクロしているようだ。近付く敵は、全て殺せと、そう育てられたから。
「Velma様」
考えて込むVelmaに、小さな手を添えて、じっと見ているSia。「寂しい?」と声を掛けるSiaに「大丈夫」と言って、抱き寄せた。強く抱きしめていないだろうか?と思う事が溶かされるように、Siaは、Velmaの背中を、優しく抱き返した。
「ねぇ、Rome。Siaと散歩に出掛けたいのだけど」
「おや、良いですね。まだ、外の世界を知るのは危険ですので、僕が作った特別な部屋へ御案内しましょうか」
「特別?」
「所で」
「ん?」
「そろそろ、名前を呼んであげて下さいね。こちらの黒い子が夢(ゆめ)。黄色い子が月(ゆえ)です。何処かの国でdream、moonと言う意味です。読み方が綺麗で、気に入りましてね、そう名付けました」
「名前」
「えぇ、名前です、僕達にもあるでしょ」
「そうですね」
【誰かに優しい夢を与えるような存在に
月のように優しく照らせるような存在に
現時点では、こんな事を考えていたRomeは、まだ白き心でいたのでしょう…もう、この意味を戻す事等…】
三ヶ月と数日目、一匹のSiaが突然に倒れた。僕に「寂しい?」と声を掛けた、黄色い方の月(ゆえ)と名付けた子でした。ポットの中で目を瞑り、動かないまま、ぷかぷかと浮かんでいる。その様子を、もう一匹の夢は、一日中そこから離れず見ていた。Romeに何が原因かと訪ねると、空気の問題だと答えた。Siaとは、綺麗な水と空気の良い場所で育つ生き物だ。廃墟と化していたこの研究所に、そのような綺麗な場所は無い。いいえ、Romeはそれを考えての「特別」を作っていた。一室、全てが植物に満ち溢れている部屋。小さな赤子のような、繊細な体を持つSiaには、この研究所を歩き回る事は、どうやら毒だと分かったのは、育てたから気付いた事何だろう。成長すれば、ある程度の場所でも免疫が付き、丈夫となるとRomeが言った。そう、僕等と同じように
体は脆くて、弱い。僕等の材料…。
「月を見ていてあげて下さい」
そう言って、Romeは研究所から姿を消し、夕方頃に帰ってきた。Romeが手にしていた物は、抱えきれない程の沢山の花。花を落として歩くRomeの姿を、僕と夢は眺めていた。そして、ポットから月を取り出してくれと頼まれ、診察台へと横にした。
「この箱に、入れて下さい」
「ん」
箱の中には柔らかなコットンが敷き詰められていた。そっと月を中に入れて、Romeの様子を眺めてみる。その、手に持っていた花を、月の上に、一輪一輪と乗せて行く。夢と、僕の手にも花を渡されて、Romeと同じように、花を置いて行く。
ただ、無言に…
言われたままに、行動にうつる
穴を深く掘って 掘って 箱の蓋をしめて
その箱を、その穴に入れて
「土を、被せて下さい」
「ねぇ、いつ、月は回復するのです?」
気にしなくても、良いと思っていた。Romeがする事に関して、触れようとは思わなかったから。だけど、気にしていた。言葉が口から出てしまっていた。
「 … 」
Romeは笑いながら答えてくれた。もう、回復しないのだと。
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