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Angel-3
その空気に感じたのは、夢だけでは無い。周りもNoirへと目を向けるだろう。そんな空気の中、ひより だけが、マイペースな態度を取っている。

「待機する時の、循環について教えて。ねぇ、何ボーっとしてるの?」

口に出す言葉が終われば、Noirの素早い攻撃が、夢へと幾つも与え落とされる。そう、先程迄は、全て、受け身を取っていたに過ぎない。次に来ると分かっている物は、如何に自分が防御出来るかである。幾つかのダメージを受けて、Noirの動きを計ろうとする。しかし

「遅い」

「何通りもの、隙がありますね」と、微かに震えた声が、Romeの口から出された。目を瞑り、また開かせれば、真剣にまた、その戦いを見ている。勝てる方法、それを考えて、与える事がRomeの役割だ。今はただ、夢を自由に戦わせて、それを見て、覚える事しか出来ない。

「ビッグダディ(調教師)と言うのも、大変ですね」

そう、優しい声をしてながらも、ハッキリとした事を申すLunaticに、ひよりが、ふーっと息を吐き出す。「何も分かっちゃいない」そう内心に秘めた言葉を出した時、Lunaticが、ひよりを見るだろう。

「えぇ、私は何も分かっていませんよ」

優しい笑顔の裏側が見えない。「俺、今、口に出してたか?」と疑問を浮かばせる。その浮かばせた物に対してなのか、ゆっくりと、透き通るような翠の瞳が開かれて、ひより へと向けられる。ぼーっとはしているが、緊張が走る。全て、見透かすような、そんな気持ちになるだろう。考える事すら出来なくなる程に、今は頭の中が真っ白に成っていき…そ、…

「Lunatic、あまり…ひよりを虐めないであげて下さい」

Romeの言葉で、ひより は、ハッと我に帰るだろう。それにはLunaticは首を傾げて、Romeへと目を向けて首を傾げる。「何の事ですか?」とでも、言い出しそうな雰囲気だ。それを、更に壊したのは

「あー、ありゃぁ、絶対避けれねーな」

白蓮の言葉だった。
数時間が経過した。夢の戦いは、終わりを告げない。ボロボロに成った状態でも、Noirへと立ち向かおうとするだろう。そして、Noirもまた、容赦なく攻撃を与える。初めて受けた攻撃の数よりも、多少ではあるが、その攻撃を回避する事が出来るようには成っている。白蓮は、そんな夢を見て、自分も早く、手合わせしたいと思っていた。そして、ひより は。

数時間と言う時間が経過したと言うのに、まだ現在に居る。眠たくもない。本来ならば、【夢】と【現実】とが反対であり、【夢を見る】時間を【現実】とし、【現実を見る】時間を【夢】とする。ひより とすれば、sleep状態に変わっても良い時間だと言う事だ。何故、眠くならない?その疑問が頭に浮かばされた。そして、嫌でも、起こされた時の事を思い出す…Lunaticが使ったやり方である。

「ちょっと良いかな?」

Lunaticへと話し掛けるだろう。先程の事もあってか、気まずい雰囲気ではある。しかし、その空気も消してしまうのが、ひよりである。驚きもしないで、そっと口にした。

「何で俺、起きてるんだ?」

直球に、その言葉をLunaticへと出す。Lunaticは、一度間を空けて、ゆっくりと話してゆくだろう。

「見えていませんが、ひよりさんの頭の上に、蓮の華が浮かんでいましてね。その華が枯れるまでの間、ひよりさんは、通常の時間で、過ごす事が出来るのです」

「枯れると値した物は、何を指している?」

聞きたくない質問ですら、スラリと話すひよりに、Lunaticは、強い子、と最初に口に出してから説明をする。

「蓮とは水に浮かぶ華、その水に値する物は、ひよりさんの精神力と成っておりますので、無くさないようにして下さいね。精神力とは、普段通りに生きていれば、消える事はありません。普段通りの生き方をしていれば、枯れる事はありませんよ。」

「…精神力…よく分からない」

それで良いのです、と柔らかく、頭を撫でてやれば、Lunaticには蓮の華が見えているのだろうか、その華が、先程よりも、大きく成長している様が見えている。

「植物を育てる感覚でいたら良いのかな?成長するって事は、この華、でかく成って、やっぱ枯れたりするんじゃ?」

「安心して下さい。先程も申しましたが、精神力が無くならなければ、この蓮は枯れる事がありません」

「ふつーに生きてりゃいいのか、まぁ、精神じゃなくても死ぬ時は死ぬってもんだよな。どんな時かってのは分からないけど」


そんな会話の中、一番驚いているのは、Romeだった。先程のLunaticの説明を聞いて、何とも言えない、そんな気持ちが、作りたく無くても出てしまい、ひより へと気付けば、抱きしめていた。それに対して ひよりは、きょとり とした顔をして、Romeの頭を、さらさら と撫で、Lunaticに目を向けていた。心の中での「ありがとう」と言うRomeの言葉は、Lunaticへと届いているだろう。柔らかな笑みを向けて、Lunaticは、Romeの頭にキスをする。

「(天使って、んな事が出来るんだね。ルールって物が本当はあるんだろ?いくら、何でも、コレに関しては、すげー、対価があると俺は思うんだけど)」

「(ありますよ、こうやって、私と、心の会話をする事が出来たり…目に見えない物が見えてしまったりしてしまいます)」

「(まるで、神様だね)」

「(えぇ、神様と言う例えが一番美しいのかも知れません。言わば、人の裏側を見通す事が出来ると言う所です)」

「(えげつ無いな。んで、何が見える?)」

「(死に行く様の燭)」


ひよりは、白蓮、Rome、夢、Noirへと目を向けた。そこには、綺麗な明かりが灯なっているだろう。微かに感じた、違和感を、無視しようとした時だった「使者の世界へようこそ」と、心の会話以外での物が聞こえたような気がした。これは、天使を綺麗に見ていた者の酬いなんだろうか?「あんまり綺麗じゃねーな」と、口に出して言葉する ひより に、Lunaticは、「そうですよ」と返す。そして、前までの生き方と、今からの生き方、どちらがまだ、マシだったか 何て物は、計れない物だ。死ぬ姿が目の前に見える物を見てしまえば、眠る事など出来るのだろうか。精神力、それが無くなってしまえば、華は枯れて… それから、どうなるか?何て事は、聞くに聞けなくなってしまった。そう思うのですら、面倒だな、と思う程に、マイペースである
ひよりだ。そんな ひより だからこそ、Lunaticが、与えた力でもあるのかも知れない。



果たしてそれは、何の為に?

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10/04/21/Magazine配信

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あきゅろす。
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