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「lie」 to call 「dream」..4
サラ地に佇む研究所は、睡蓮率いる軍隊により囲まれたかと思えば、何も無い場所で、円を描くように、人は研究所の隣で、戦闘態勢を整えていた。一体何をしているのだ?と小首を傾げて、白蓮は、木の陰からその軍隊を見ている。他の三人は、ファイルを取出して、何かを小さな声で話している。そして、軍隊は一気に、その何も無い中心向かい、集まり、仲間同士で体を切り刻み、撃ち続けている。研究所の隣で、人がバッタバタと倒れて行く姿が見えている事、何故、そう白蓮の目に映るのか分からない。生き残った一人が嬉しそうに笑っている。その意味が分からない行動をしている様子を見ている白蓮に気付いたのか、夢が白蓮の名前を呼ぶだろう。

なぁ、何で撃ちあってんだ ?

血肉の臭いがする。人が焦げた臭いも。そして、仲間だった知り合いの姿も、幾つかは目にしていた。死ぬ姿も…スクリーンの世界とは違う、これは現実に起きてる姿だ。何度も名前を呼ぶ声に、白蓮は気付かないのか、ただ、ぽつぽつと言葉を口にする。

あの 喜んでいる奴はもしかして…紅蓮のスパイ、だった とか?いや…違う、アイツは睡蓮の助手をしてい …

白蓮さん!

肩を掴まれ、一気に、体が引き寄せられる。白蓮の目を見た夢は、小さな溜息を落とすだろう。ひより は、じーっと ただ見ていて、欠伸を一つ零した。そんなひよりに、白蓮は胸倉を掴み、殴り掛かろうとするだろう。その手を止めて、頬を打ったのはRomeの手だった。

羊 …っ

羊じゃないと、何度…

納得いかねぇ!何が …っ

白蓮さん、落ち着いて下さい

落ち着ける訳が無い、こんな状況で、のんきに話して、それに

何…?

眠たそうな顔で白蓮を見るひより、それには怒りが露になる事がよく分かる。瞳の縦線が深く刻まれ、殺気と言う物を出すだろう。しかし、ひよりの態度は何も変わらない。

嗚呼 そうかい…じゃあ アンタがしたいようにすれば良い、だけど アンタに俺が殺められるか?

Romeの手に手を翳して、白蓮の腕を解放させろと顎を使って示し「ほら」と声を出す。遠慮無く、白蓮はひよりに殴りに掛かるだろう。しかし、殴ったその指から、真っ赤な血が浮かび上がった。鉄のように固い顔をしている。それ所か、相手には何もダメージを与えられていない。

…ひより、悪ふざけが過ぎますよ

【夢】に翻弄されてる そいつが悪い

【夢】だ、と?

…白蓮さん、申し訳ございません、これは私の能力なのです。

理解、出来ない …

私が貴方を叩いても起きないぐらいですからね、どれだけ貴方が魔力を持っているのか、よく分かりますよ…逆に弱点でもあります

羊 … …?

はぁ、夢、彼を起こしてあげて下さい 仕事は終わりましたでしょう?もう、解いて良いですよ

はい

夢は白蓮の目をじっと見つめる。次第に白蓮は、目を瞑り、ガクリと倒れた。次に目を覚ませた時、目に映る夢の姿。ぼんやりと浮かぶ顔と、思考回路がまだ、はっきりとしない。

気付き、ましたか

朦朧とする頭で、コクリと頷き、起き上がろうとし、そして、ひよりの顔を見ると、ひよりは眠りに落ちていた。その姿を見て、白蓮の怒りは思い出したように、込み上げて来るだろう。夢を振り払い、ひよりの近くに行く。真っ赤な瞳が、彼を見下げ、一気に並んだ指先の爪が、ひよりの首へと目掛けられる。

よく眠ってられるもんだ … 良いぜ…このまま 目が覚めないようにしてやるよ

白蓮さん、話を…

止めるつもりか?

先程、話をしましょうと言った話です

後で聞く

後からでしたら取り返しが付きません

… …何だ ?

そっと、夢の両手は白蓮の鋭い手へと触れて、ひよりから離す。そして、その手を自分自身の首へと向けて、苦しそうな笑みを浮かべる。その意味が何を示すのか分かる。何かがあれば、自分を刺せと言う事だろう。同時に白蓮が思う事は、後味の問題だ。



そっと、手を下して、腕を組む白蓮に、丁寧な一礼を見せる夢。話せ、と言うように、目が苛立ちを見せようとも、冷静に、夢の口は開かれた。

静粛な心、ありがとうございます



先ず始めに、失礼しました。

手を合わせて、正座をした姿勢で頭を下げる。そのまま頭を下しながら、ゆっくりと 話しを進めて行くだろう。

私は夢師、ひよりさんは夢食い。二人で一つの役割で、能力を発揮させる事が出来ます。

白蓮の態度は変わらないまま、ジロリと夢へと目を向ける。姿勢を上げて、夢もまた白蓮の目へと向けて、続かせる。

私の能力は、相手を【夢】に落とし込む事が出来る力、言わば、催眠術の絶対能力と言う所でしょうか。そして、その人の【夢】の行き道を、操る事が出来ます。

絶対 …?そりゃあ有り得ないな、幾ら力があっても、アンタにも精神力や、タイミリー(限界)って物があるだろう?

えぇ、おっしゃる通り 私にも限界があります。私だけの力でしたら、持って2分が限界… そして、集中力を使う能力ですので、バウンドが計り知れない物でしょう…



通常なら、そう、白蓮さんがおっしゃる通りの事が起きます。しかし、夢食いの ひよりが入れば、事は変わります。

…夢食い…?

彼は、夢の中の住人と言った所でしょうか。大半は、夢の中で生きています。

夢の中…

現実、つまり今、此処に居られるのは、私が能力を引いた時の23時間後に目を覚まします。そして、3時間後に再び眠りに落ちます。

3時間後?

彼にとって、現実が【夢】で、【夢】が現実なのです。私が能力を発揮した時のみ、【夢】に落ちた人は、ひより に会う事が出来る。白蓮さん、貴方が先程ひよりに会ったのは、【夢】の中での ひより だと言う事になります。

… … 【夢】 …


突然に、振り返り、研究所へと目をやる。すれば、軍隊の全ての人が倒れている事が見えるだろう。しかし、血の臭い、焦げた臭いはしない。気付きましたか?と口にする夢に、無言で頷く。

だけど、臭いも、痛みも、感じ …

先程【夢】で感じて、見た、真っ赤に染まった手を見る。そこには今は、痛みを感じず、怪我も無い。沈黙し、ひよりへと目を向けて、近付いて行くだろう。

つまり さ… コイツは、全部、今見せられてる【夢】の事を、受け止めて、見ていて…

見ている … よりも残酷な物です

黙っていたRomeの口が開かれて、ひよりの髪に指を絡ませ、口元へと持って行く。「泣き出しそう」な程の、弱々しい彼の表情が、何か引っ掛かる。

それが、彼の…食事ですから。それを食べないと、彼は生きて行けない。それが【夢食い】の役目… そして、【夢】を食う、彼がいるから、彼(夢)もまた、絶対なる力を意地し続ける事が出来る…二人で一つの力であり、夢師だと言う事です

そんな 事 … だ れ… が ……

言葉が途切れる時にはもう浮かび出されていただろう、その存在の名前を。しかし、今のそいつを見ていれば、先程から感じる彼らしく無い違和感が浮かび出される。そして、完全に結び付けられる。

私が、彼等を使って しまったのです

そして、追い詰める彼の苦しみを、幾度か感じていた筈なのに、口に出された事により、更に深く、追い詰めた気がする。優しい鳥の鳴き声が聞こえた気がする、似合わない、今の現状に…やさしく。静かな寝息を立てて眠りに付く彼だけが知る、これは夢だと言う現実。



− Next 10/02/03 更新

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