鉄の匂い── 否、これは血の匂い─── そう。 私の一振りで心の鼓動が止まる。 それは一瞬。 それは永遠に。 「流石だね、結城君」 「…お褒めの言葉、ありがとうございます。──藍染隊長」 満足そうに薄ら笑いを浮かべる藍染を横見しながら周りを見渡す。 赤── その一色しかない 四十六室は全滅した 私の手によって ただの戯れ これから始まる幕開けの為のほんの 戯れだよ── 「では、藍染隊長。私はこれで…」 「あぁ…分かった、これから忙しくなる、期待してるよ。」 「はい」 ……… ……………… 「いいんですか?藍染隊長」 去っていった舞を見つめながらギンは口を開く。 「何がかな?ギン」 「またまた〜藍染隊長、分かってはるくせに。 あの子、まだ心は此処にあらへんみたいやん」 「あぁ…そうみたいだね。 柊隊長の部下だからね、なかなか簡単にはいかないよ」 「楽しそうですね」 「楽しい…? ……あぁ、楽しいよ、手のひらで踊る彼らを見てるとね…ただ、素直に踊らない子を導いてやる、それだけだよ」 「……」 ◇◇◇ 気持ち悪い 息を吐く事でさえ苦に思う 「桃、冬獅郎…」 もうすぐ、始まる幕開けを目の前に言い表せない程の不安が私を取り巻く。 四十六室の人達は…無事だ 藍染が気づきさえしなければ。 ──ダミーだということに そう、舞は藍染の手をとった訳ではなかった。 一死神として。なによりも零として…藍染の企みを そして、桃、冬獅郎を守る為に一人で闘うことを決めたのだ。 例え、自身の身が滅びたとしても… 「もうすぐ、全てが始まる。 柊隊長……私、守りきれるかな?」 現世では既に朽木さんは発見され、明日には朽木隊長と恋次が現世に向かう。 私は……例え死んだとしても 尸魂界を守る……私が“零”で有る限り━━━… |