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白石君の心変わり…?


社会人1年目を迎えてから一ヶ月が経った。今までの頑張りが実となったのか重大な仕事を任せられることが増えてきて仕事が楽しく感じられるようになってきた。仕事に対して結果を出せるようになったのもいつも隣でフォローをしてくれていた佐々木さんのお陰なのかもしれない。

それぐらい自分の仕事環境に佐々木さんは影響力があったのだ。


「じゃ、白石君また明日会社でね!」

「駅まで送ろうか?」

「すぐそこだから大丈夫!今日はありがと。それじゃ」


手を振って駅に向かってく佐々木さんに自分も手を振り返す。人ごみにまぎれて段々見えなくなっていく佐々木さんの背中を見送った後に踵を返してそのまま自分も帰り道に向かった。


初めて佐々木さんに助けて貰ったあの日から、仕事帰りに佐々木さんと2人で飲みに行く機会が増えた。お互いの価値観も合うし、佐々木さんの考え方には得るものがある。女性ながらにストイックに仕事に励む佐々木さんの姿勢には憧れさえ感じていたのだ。

そんなことを考えながら歩いているとスーツの右ポケットから振動が鳴った。ポケットから携帯を取り出して画面を見てみると【どうしようもない子】の文字があった。通話ボタンを押して電話に出る



「蔵ノ介ー!お疲れー!今帰り?」

「おん。会社の人と飲んどったわ」

「そうなんだ!てか明日土曜日で仕事お休みでしょ?泊まりに行ってもいい?」

「明日は休日出勤なんや。だからまた今度な」

「えーー!またぁ!?かれこれもう一ヶ月も会ってないじゃん」

「仕事なんやからしゃーないやろ」

「それは、そうだけど…」

「とにかく今日は無理や。また連絡するわ、じゃ」



そう言って一方的に電話を切ってしまった。





どうしたんやろ俺…最近ない子に会いたいという気持ちが前と比べて薄れてきた気がする。前はどんなに多くの仕事を抱えとっても自力で終わらせてない子に会いにいっとったんに…。いや、多分今は仕事が上り調子になってきたことで仕事に夢中になっとるだけやろ。落ち着いてきたらまた気持ちも戻るはずや。決してない子に冷めたわけやない…!


そう自分にいい聞かせて帰り道に向かった。







――――――――………






「ん…?朝…?」


昨日家に帰ってから持ち帰った仕事を片付けてる間に眠ってしまっていたのか、外から聞こえてくる小鳥のさえずりに朝を迎えたことに気付く

目をこすりながらシャワーに向かうとテーブルの上に置いてあった携帯がチカチカと光っていた。

携帯を開いてみるとどうやら新着メールが届いてるようだった


「誰や?」

そう言いながら覗くとそこには


【バーカ!】


と一言表示してある文字があった。

差出人はどうしようもない子


「…アホか」


少しイラッときた俺はそのまま携帯を放りなげて浴室に向かった





――――………


「おはようございまーす!」



朝っぱらから苛々な出来事に振り回されつつも会社に着けば雑念を振り払うように一瞬で気持ちが切り替わる。そこが俺の長所の一つではあるだろう


部署の扉を開けたら佐々木さんがいたから挨拶をする





「佐々木さんおはよう!」

「おはよう白石君!今日も一日頑張ろうね!」

「朝から元気やな佐々木さんは!」


朝から笑顔ではりきっている佐々木さんを見て思わず頬が緩んだ。まったくない子も佐々木さんのことを少しは見習ってほしいものだ。だけど俺はこの時点では気付かなかった。その佐々木さんの笑顔が創られていたことに−−−−……







「なに!?書類をなくした!?何をやってるんだね君は!!」

黙々と自分の作業に取り掛かっていたらいきなり部長の怒鳴り声が一室に響いた。

驚いて後ろを振り返るとそこには部長に頭を下げてる佐々木さんの姿があった。


「めずらしー!佐々木さんが怒られてるなんて」


隣にいる遠藤が声をあげる


「書類をなくしたって…なにか手違いでもあったんやろうか…」


必死で頭を下げてる佐々木さんの姿になんとも言えない気持ちになった。



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