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ひぐらしのなく頃に
園崎魅音
「魅ぃちゃ〜ん!おっはよ〜ぅ!」


次の待ち合わせの場所、水車小屋の前に俺たちを待つ人影が見えた。


向こうもこっちに気付いて、手を振ってくる。


「お、来た来た。遅いよ二人とも〜!」


「いつも遅いのはお前の方だろ!」


レナの律儀さとは逆にマイペースなヤツ。こいつは園崎魅音。一応、上級生でクラスのリーダー役だ。


レナが女の子らしく振舞おうと努力していることに比べると、魅音はまさに正反対。髪を長くしていて、外見は年相応の少女なのだが、性格はだいぶ男勝りだった。


もっと言ってしまっていいなら、長髪をまとめたポニーテールと、女であることを主張するわがままなバスト以外に女の子らしい要素は皆無とまで言い切れる。……さすがに言い過ぎか?


「おはようレナ。そして圭ちゃんお久しぶり!何年ぶりだっけぇ?」


「二日しか休んでねぇよ!」


「あっはは!そうだっけ。前に会った時はあんなに可愛かったのになぁ!」


魅音の下品な視線が、俺の胸元からつーっと下がって行き、下腹部に集まり始める。


「そうだよ、立派になったから、驚くぞ」


「逞しくなっちゃった上にヒゲまで生やしちゃってさぁ〜☆」


「毎朝、元気全開で大変なんだ。今度見せてやるから挨拶してみろ」


「今度なんて言わずに今でいいんじゃない?朝の新鮮な空気を吸わせてあげたらぁ?」


「よし分かった。大公開だ。後悔するなよ…ッ!?!?」


俺がジッパーに手をかけたところで、レナが慌てふためきながらまくし立てた。


「…ね、ねえねぇ…、何の話だろ何の話だろ…ッ!?」


赤面しておろおろしながら無知を装うレナだが、がっちりとついてこれているのは間違いない。







「どうだった?久しぶりの都会はさ」


魅音はようやく下品モードから復帰し、朝の爽やかさに相応しい話題に転換してくれた。


「葬式で帰っただけだぜ。慌ただしいだけだったよ」


「でさ、探しといてくれたぁ?頼んどいたヤツ」

「お前、人の話聞いてなかっただろ。俺は葬式で帰っただけで、おもちゃ屋巡りをしてる暇なんかなかったんだよ!」


「ちっちっち。おもちゃ屋とホビーショップは全然違うよ?特に洋モノはこっちじゃなかなか手に入らないんだから」


「魅ぃちゃん、またゲームの話?」


レナがくすりと笑うと、魅音は得意気に頷いて見せた。


「そ!圭ちゃんにカタログ貰ってきてほしかったんだけどねぇ」


「そんなのまた通販で取り寄せりゃいいじゃねぇか」


「ま、そうするかなぁ。またプレイングの熱いのを入荷するからねぇ!」


魅音はカードゲームやらボードゲームやらの愛好家で、様々な種類のゲームを収集しているらしい。


なんでも、レナの話によると、魅音の部屋は国内外のゲームの博物館と化しているらしい。


「俺にもわかりやすそうなゲームがあったらやらせてくれよ」


「へぇ、いいよ!男の子って外で遊ぶ方が好きだと思ってたよ」


「んなことないぜ。男だって雨の時は屋根の下で遊ぶぜ?トランプや野球盤なんかメチャクチャ盛り上がるぞ!」


「…わぁ…。じゃあ今度は圭一くんも仲間に加わるのかな。…かな!」


レナが全身で喜びを表現しながら、俺と魅音の顔をキョロキョロと見比べる。魅音が力強く頷いて見せると、レナは一層表情を明るくした。


「あ、そうそう。一応言っとくけど、うちらのレベルは高いよぅ?」


「上等じゃねぇか。俺だって遊び百般、遅れを取るつもりはないぜ!」


「あははは、よかった。これでまた一段と楽しくなるね」


レナはやたら嬉しそうに笑った。


これだけ親しそうに話してはいるものの、実際ここに転校してまだひと月も経っていない。


クラスのみんなが転校生の俺が早く馴染めるよう、色々と気を遣ってくれているに違いなかった。


だから俺もこれ以上気を遣わせないよう、早く馴染む努力をしなければならない。


自分でも少々馴れ馴れしいかな、と思うくらいの方がこの場には相応しいのだ。きっと。

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あきゅろす。
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