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NO.13


――バッ‥





‥ふわっと香る龍にいの匂い。
――‥抱き締められてるんだと、俺は気づくのに時間を要した。





――震える身体。




そんなふうに震えてる龍にいが‥幼い子供みたいに見えて、少しおかしかった。







――「もう泣くなって言ったのにな‥」――。




俺は他人事みたく頭のどこかで呟いた。



相も変わらず、龍にいは俺を抱き締めたまま泣いてる
出来るだけ声を押し殺して‥。



今までずっとそうして来たんだろう‥多分無意識に、龍にいは自分を押し殺してた。



まるで引き留める方法を知らない子供みたいに‥

――しっかり俺を包み込みながら。












‥もうこのまま消えてしまいたい。



漠然とそう思った。

はじめから何も無かったのに、これ以上失うことなんてできない。


ただ呆然とされるがままの俺は、とてつもなくカッコ悪くて



‥とてつもなく弱かった。













『―‥‥めん‥』








弱々しく、龍にいが呟く。







『‥めん‥ごめん!!‥ごめん!!ごめん!!ごめん!!』



繰り返し‥龍にいが謝る。













――『‥ごめん‥っ』




最後に、か細く響いた龍にいの言葉は‥それでもちゃんと俺に届いた。












――‥ナンデ、謝ルノ?












――‥泣かせたかったわけじゃない。


俺だって‥フツーに生きて、フツーに死にたかった。

失ったものは大きい。
何を無くしたのかさえ、わからなくなるくらいに。

自分をあわれむ暇なんてなかった
当たり前みたいに‥振る舞わなきゃならなかったから。


でも‥








――今、龍にいは泣いてる




それが凄く嬉しかった。

人間らしく、感情を少しだけでも吐き出せてる
そんなことがどうしようもなく嬉しかった。













――――ポタ‥ッ








――涙が‥落ちた。











もう溢れ出したら止まらない。


止められない涙は‥龍にいの肩を濡らしてく‥、
























―――‥『‥‥龍にい‥‥っ、俺‥‥』











呟く。

届かなくてもいい‥弱さを吐き出せるなら、

誰かに届いてくれなくとも‥。




















―――『‥生き、たいよ‥‥』




















龍にいの前で、こんなにみっともなく泣きじゃくったのは初めてだった。
思えば‥今までそうしようと思わなかったのかもしれない。



神様が居るなら、理由を教えて欲しかった。


何で俺なのか、何で俺じゃなきゃいけなかったのか。














これ以上、ダレヲ怨めばイイノカ?












――俺の言葉が届いたのか‥龍にいは何も言わなかった。
しばらくそうしていたけど、お互い口を開こうとはしなかった。








ただ静かに‥


震える声が‥微かに響いていた‥。



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あきゅろす。
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