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NO.11


『‥‥ごめんな‥櫂、っ‥‥』



――龍にいが、泣いているのを








『本当に‥ごめん‥‥っ』







―――俺はただ‥ぼーっと見ていた。









『‥かぃ‥っ、』








俺の名を呼ぶ龍にい‥。
確かにそれは龍にいの声なのに。









――『‥、‥櫂‥お前‥』







その嗚咽を噛み殺すような切ない声は‥








『‥‥‥お前、はなっ‥櫂‥っ』












絞り出すように言葉を紡ぐ龍にいは










『おまぇ、っ‥死ぬかもしれねぇんだよ‥』








――俺の知らない人だった。










‥‥だから俺は、その嗚咽を聞きながらでも‥‥















『お前‥いなく、なるかも‥しれないんだよ‥っ‥、!』




















微笑みかける事ができたんだ。























―――‥カシャン。
















小さな小さな、音がした。




















俺は、ふっと龍にいに笑いかけた。




――なぁんだ。


そんなことか。



















俺は苦笑をしながら龍にいに話しかける。



『ホント、馬鹿だなぁ龍にい‥』



一体どんなことをしたら,こんなにも穏やかな気持ちになるんだろう。





『俺,知ってたよ?そのこと。』






龍にいが‥目を見開くのがわかった。






――こうやって泣いてたのかな‥?



考えが、頭をかすめる。


こんなふうに、いつも一人で‥こんなに悲しい、泣きかたをしていたのかな‥?



そう思うと、胸がいたんだ。






『世界にはさ,いや日本のなかだって‥移植のドナー待ちしてる人、山ほどいるんだってな』







龍にいの目から‥涙が溢れた。
それでも俺は全然動揺もせずに‥話を進めてく。









『ドナーは、こない。
俺にだってそのくらいわかるよ‥』









少しうつむいたまま‥話を続けた。
息をすることすら忘れてるような龍にい,言葉を紡ぐ刹那‥その目を‥‥見た。












『龍にい、俺ね。』










―――傷つけることは‥わかってた。





『俺、もうすぐ









死ぬんだってさ。』













傷つけることはわかってたんだ‥。
それでももう、どうでもよくなってて。


ただ呆然と涙を流す龍にいに、やっぱり今まで以上きちんと‥










微笑みかける事ができたんだ。

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あきゅろす。
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