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NO.7






――‥「ウィィィ‥」



静かにエレベーターの動く音がする‥



壁に寄りかかったままで少しうつむくと、持っていた花が包装紙に擦れてカサ…と乾いた音をたてた。










――‥「俺がしっかりしなくちゃいけないのに‥」












頭ではわかってた。





もう逃れられないと知っていたのに‥



俺はその事実から逃げるように、ソバにあった花瓶をとって病室を後にした。



花なんて‥持ってない。


櫂にもそれはわかってたはずだった‥


俺にもわかってた。わかってたけど






どうしても‥耐えられなかった。







――‥「どうして櫂が‥?」











いますぐこの場で叫びたくなる。



もっとどうでもいい奴たくさんいるだろ‥?



そんな勝手な思考が‥頭を巡る。














――『‥櫂…』





















――‥呟くと‥目を閉じた。























――“『ふ‥っ‥‥く‥っ‥‥』”













病室のドアに手をかけたとき






押し殺すような櫂の泣き声が聞こえた。












櫂が泣いてた…








いつもいつも強がっていた櫂が










声を震わせて












静かに泣いてた。














櫂を笑わせてやりたかったのに…




…無理にじゃなくて‥心から‥楽しそうに。













‥‥俺が病室に入った時、櫂はもう覚悟を決めていたのだろうか‥?

無理をして笑って‥


強がって‥


こんな所じゃ満足に泣き叫ぶことも出来ない。



感情を押し殺すしかない。











――‥『なぁ、もう‥いいだろ‥?』










壁に寄りかかったまま上をむいて自嘲ぎみに笑うと、また誰にともなく呟いた。














――『‥これ以上…何を失えばいいんだよ…』













櫂が「移植」っていう決意したこと‥俺が支えて行こうと思ってたのに…



なのに…それでも












櫂の決意が










痛かった









まだ全てを受け止めるなんて出来ない。

‥でも時間は過ぎる。
















―‥『頼むから‥連れていくなよ…っ』















泣かないと…決めていた。



『もう泣かない』と決めていたのに…





上をむいても…涙が溢れた。






溢れた涙が、花に落ちた










―‥『もう誰も‥なくしたくないのに…っ』














前の窓に…

白く舞う雪が見えた










あの日の雪と…少し重なった。

















『……ふ‥うぅ…っ‥』












もう泣かないと…


決めていたのに…





俺は壁ずたいにしゃがみこんだ。
















――『……う…うぅ……く…っ…』
















歯をくいしばって‥



涙をこらえた。


















それでもまだ‥…雪は降ってて。
















――『…‥う‥つっ‥‥




‥櫂……っ‥』
















持っていた花が


床に落ちた。




――‥「ガーー…」




エレベーターの扉が開く















『……櫂……っ…』













――‥「チーン‥」
















扉の閉まる   音がした。









誰も乗らないエレベーターは…



俺をおいて‥動き出した。






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