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NO.1



『心臓弁膜症』



それが俺の病名らしい。






名前なんていちいち覚えないけど、自分のおかれてる状況はなんとなく分かった。



俺は生まれつき心臓が悪くて、初期段階を通り越したこの病気は‥薬でも,手術でもなく‥、



――移植手術をしないと
あと数年の命らしい‥。

まぁ自分の心臓が悪いなんて昨日初めて知ったけど。



どうせならもっと‥父さんと母さんに聞いておくべきだった‥。








―‥ピチチチ




鳥の鳴き声が外から聞こえた‥俺は窓の外に目をやる。近くの木の枝の上で、小鳥たちが仲良く遊んでいるところだった。


俺はそのさえずりを聞きながら、昨日‥いや。今日みた夢のことをおもいだした。




‥―ピチチチ




‥‥なんであんな夢を見た‥?




‥―ピピ、チチチ







もう忘れかけてたのに‥









‥―チチチ、チ








父さん、俺は‥

『かいー!!生きてっかー!?』


突然大きな声がして
バタン、と音のしたほうを見る。
そこには病室の扉を思いっきり開いて鞄を持ち、立っている龍にいが居た。




『‥あれ?龍にい今日仕事じゃなかったっけ?』


病室のわきにかかったカレンダーを見ながら俺は龍にいに呼び掛けた。
今日は確かバイトの日だったはずだ。



龍にいは俺の質問にすぐには答えず‥ふぅ、と息をはくと
俺のベッドのわきの椅子に腰かけた。



『今日はなし。明日にしてもらった♪』



八重歯をだしてニカッと笑う龍にいに苦笑すると、俺は龍にいが持ってきた鞄を見つめた。



――…『‥これ、だいたい櫂が着てた服とかあるだけ持ってきたから。もし足りなかったり、なんかあったらいって?』



何も言わないで鞄を見つめる俺に気づいたのか、龍にいは淡々と説明してくれる。



昨日から俺は入院することになった。病気の関係上、いきなり状態が悪化するのを避けるために検査もかねて、ドナーが見つかるまでこの病室で過ごすことになったのだった。




『…うん。ありがと龍にい』


今度は俺がニカッと笑うと、龍にいも少し微笑み、俺の頭をくしゃっとなでた。






『…心配すんな。お前のドナーは、
必ず俺が見っけてやるから、』


なにかを感じ取ったのか、何もいってないのに龍にいは俺の目を見て確かな言葉をかけてくれた。



これから長くなるだろう‥





俺は少しばかり自分がこれからどうなるのかわからず。不安だった



『‥』



俺はだまって首を縦にふると
龍にいはまた俺の頭をくしゃっとなで、台の上にあった花瓶をとって病室をでていった。










―…“闘病生活ってやつか…”



俺はこれからの生活を考えて自然とため息を溢した。








“‥俺はへーきだよ”








呟くことなく自分の手をぐっと握ってまた外を見る。



さえずりは聞こえなくなり、
いつの間にか小鳥たちは姿を消していた。



長くて先の見えない『闘病生活』が










確かに始まった。

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