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先生≠彼 番外編
♯1


ピンクとブルー、お揃いのデキャンタに注がれてるのは、けいちゃんは透明感のあるロゼのワイン、あたしはマスカットのサイダー。

「けいちゃん」
「千帆」

名前を呼び合ってから、あたし達はグラスをごちそうの並んだテーブルの上に上げる。

「お誕生日おめでとう」
「結婚1周年おめでとう」

言い合ってから、カチっ…とグラス同士を重ねてから、一口ずつ食前酒(ジュース)を飲んで、今度はテーブル越しに唇を重ね合った。


3月22日。今日はあたしたちにとって、特別な日――。けいちゃんのお誕生日でもあって、あたしとけいちゃんが入籍した日でもある――。


先生と生徒だったあたしとけいちゃんが、旦那様と妻になって1年――。めまぐるしい日々は、勿論いいことずくめなわけはなくて、ケンカしちゃったり、けいちゃんに本気モードで怒られたり、いろいろあったけれど。


「けいちゃん、あたしと結婚して良かった…って思ってる?」

テーブルの向かいの席のけいちゃんの目が、ゆっくり細められる。今日で24才になったけいちゃんは、そういう顔すると、すっごくおとなびて見える…。

甘い笑顔に見惚れてたら、けいちゃんのおっきな手が、あたしの頭に伸びてきた。くしゃっとてっぺんを撫でてから言った。


「もちろん幸せだよ。千帆は?」
「…し、幸せです…」


まだ19と24で、しかもこの間まで先生と生徒で。常識外のあたしたちだけど、相変わらず、幸せにばかっぷるやってます――。


うちの両親から貰ったワインを、ひとりで半分以上あけちゃったけいちゃんはご機嫌で、ごろんとソファに寝そべって、うとうとしてた。


「けいちゃん?」

キッチンの片付けを終えたあたしは、けいちゃんの隣に座った。


「千帆…」

とろんとした目のままで、けいちゃんはあたしの膝に擦り寄ってくる。


「千帆の膝枕ゲーット」

子どもみたいに言うと、あたしの膝に頭乗せて、またけいちゃんの瞳は閉じちゃった。


(うわっ、あたしこれ、身動き取れないし、何も出来ないじゃん。けいちゃん、ひど〜い)

そうは思うけど、けいちゃんの無防備な寝顔見てたら、とても起こしたり、そっと頭どかしたり出来なかった。


(こんなけいちゃん、知ってるのあたしだけだよね…)

けいちゃんの瞼に掛かった前髪を払いながら、あたしは『妻』の特権に酔いしれる。


よく結婚して一緒に生活しちゃうと、お互いのやなとこが見えて来ちゃって、或いは一緒にいることが当たり前になって、気持ちが冷める…とか言うけど。

あたしは結婚前と同じかそれ以上にけいちゃんが好き。



ちょうどテレビではサプライズでの海外ウェディングのドキュメントやってて。

白い砂浜と青い海をバックにしたロケーションでビーチウェディングが行われるところだった。

ああいうのもいいなあ…。いつかあたしもけいちゃんのためにウェディングドレス着たいなあ。そんなことを思いながら、ほうっとため息をついた瞬間。


「千帆も、ああいうの着たい?」

下からけいちゃんにそう聞かれた。



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