先生≠彼【完】
♯3
「さっきから、素の俺は千帆を抱きたいってうるさいし、教師の俺はダメだ、って止めるし。みっともないくらいうろたえてる心の中、見せてやりたいくらい。きっと呆れるよ」
『抱きたい』って思ってくれるんだ。ストレートな台詞にキュンとなった。
みっともない、ってけいちゃんが思うけいちゃんが、あたしには身近でそして…好きだって思った。あたし、おかしいのかな。
理性と本能、モラルと欲望の間で揺れるけいちゃん。
怖さと好奇心が行ったり来たりで、あっちこっちに傾くあたし。
もし、あたしとけいちゃんが生徒と先生でなければ、こんな夜はとっくに越えてたのかな。
もし、初めから生徒と先生として会ってたら、あたしたちはこんな関係にはならなかったのかな。
だけど結局何処かで道を逸れてても、別の方向に行ってしまったとしても、あたしたちはこうなってた気がする。
「…い、いいよ?」
声は震えてる。かちんこちんと評された身体から伸ばした腕も、ロボットみたいにぎくしゃくしてた。
言ってから、けいちゃんのパジャマを両手でぎゅっと掴んだ。短い言葉だったのに、あたしの意図は十二分にけいちゃんに届いたみたい。今度はけいちゃんの身体が硬くなった。
「無理しなくていいよ、千帆。勢いですると後悔する…」
「無理じゃないもん。勢いじゃないもん。――けいちゃんは後悔する? あたしが生徒だから、やっぱりダメ?」
けいちゃんはあたしの頭をぽんぽんとなでてから、思い切り顔を綻ばせた。
「千帆とのことを後悔したことなんて一度もないよ。これからもきっとね」
けいちゃんはあたしの上に覆いかぶさって、キスしてきた。最初からあたしの官能をとろかすような激しくて濃厚なキス。
「…んっ、けいちゃん…」
「千帆、可愛い。愛してるよ」
そして心もとかすような甘い台詞をキスの合間に囁く。
「あたしも…」
照れちゃって愛してる、なんて言葉は使えなかった。でも、けいちゃんだけなの。大好きなの。伝わるといいな、伝わってほしいな。
そう願いながら、あたしの上のけいちゃんの背中に腕を回した。
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