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先生≠彼【完】
♯2


一瞬だけ目を見開いたものの、酒井はすぐに勝ち誇ったような笑みを浮かべた。俺の口から放たれた事実が、自分の想像と合致してたことが嬉しいらしい。


「やっぱりそっちがあんたの本音? 引かないよ。元々彼氏がいるのなんて知ってる。その相手が、あんたってだけだもん」

清々しいまでの宣戦布告に俺は逆に溜息をついた。


「…やってらんないよな、生徒とガチの三角関係」

ふっと、自嘲してから、俺はポットに水を張り、スイッチをオンにする。ミニバーのドリップコーヒーを乱暴に開けて、セットした。「お前も飲む?」と聞くと、酒井は頷いてから、にやにやしながら俺の背後に近づいてくる。


「安心していいよ。俺、誰かに言ったりしないから。だって、遠藤ちゃん、今、先生と生徒としてでなく、対等な立場で、俺に話してくれたでしょ? だったら、俺も卑怯な真似はしない」
「お前が誰かに話すとは思ってないよ」
「あー、意外に俺、信頼あるのな。春日、可愛いもんな。手出したくなるよな。先生、ダメ…っ、なんて言われて、却ってそそられたり?」

いかにも高校生男子らしい妄想を、酒井は俺に語りだす。言わなきゃ良かった。


「…言っておくけど、付き合ったのが先。俺が生徒に手を出したんじゃなくて、彼女が生徒になったの」

俺の暴露に酒井は、今度の方が言葉を失ってた。


「…え?」
「だーから。彼と彼女が、先生と生徒になっちまったんだよ、何の因果か知らないけど」

ドリップのフィルターに、交互にお湯を注ぐ。まだ湯気の立つカップのひとつを酒井に渡し、もうひとつに口をつけた。酒井は一口飲んだだけで、「にがっ」と呟いて、俺の分までミルクも砂糖もドバドバ入れてた。


「付き合ってどれくらい?」
「もうすぐ半年」
「他にこのこと知ってる奴いる?」
「木塚は、千帆が話した。…沖本…には、バレてるな、多分」
「りょーかいっ」

酒井は揚々と言って、何故か敬礼のポーズまで作って見せた。


「…楽しそうだな、お前」
「うん、楽しい。ワクワクする。秘密の同盟みたいで」
「…お前と馴れ合う気は全くないんだけど」
「なんでぇ」

そんなことを話してたら、消灯の放送がかかって、酒井は「やべっ」って言いながら、慌てて部屋に戻っていった。


ひとりになった部屋で俺は盛大に溜息をつく。長かった修学旅行がようやく終わりを告げようとしていた。


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