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先生≠彼【完】
♯2


「い、おうと思ってたこと…?」

けいちゃんの警告がまた蘇った。もしかしてそれは告白とかだったりするのかな。いやまさか。


「うん。けど、やめた…ってか延期。今、言ってもきっとしゃあないから」

酒井くんは清々しく笑う。


「最初はさ、玉砕でも何でも、俺の気持ちさえ伝えればいいや、って思ってたんだけど。遠藤ちゃんに言われちゃったんだよね。言葉って銃と同じだから、放ってしまったら、もう戻せない、って」

「……」

酒井くんは頬杖をついたまま、目線をあたしに固定する。優しい、目。いつもおばかなことばっかり言ってる酒井くんと同じ人物とはとても思えない。


「酒井くんの気持ちって…」
「あはは、ここまで言ったらおんなじ? 春日にも、俺の言いたいこと、わかってるよね。けど、今はまだ引き金引かない。銃口突きつけられたまんま、って気分悪いかもだけど、少なくともトリガー引かなきゃ春日を傷つけることはない――そうだろ?」

流石にここまで言われたら、あたしだって気づく。こんなの『好き』って、言わないだけの告白と一緒じゃん。

ああでもそうか。まだ打ち込まれない弾に大して身構えることはしても、対処することは出来ない。

俺の気持ちは知ってて。でも、今は友達のままでいて、って酒井くんはそう言いたいんだ…。


けいちゃん以外にあたしを好きだって言ってくれる人がいるなんて思わなかった。いや、けいちゃんがあたしのカレシって言うのも、予想外だし想定外だし、未だに信じられない事態なんだけど。


好き、かあ…。酒井くんのことは好き。でも、けいちゃんへの気持ちとは明らかに違う。

たとえば、ふっと立ち止まった坂の途中。眼下には町並みが広がって、その先には海があって、あたしの住む街とは全く違う景色。

綺麗だなと心に留まったそれを、あたしはけいちゃんと一緒に見たいと思っちゃう。


『千帆、長崎はね昔は…』

多分始まっちゃうけいちゃんの歴史のウンチクはあたしの中にさっぱりのこらないけど、聞いてるだけで嬉しい。


傍に彼がいてもいなくても。
あたしの心の中は、いつもけいちゃんで溢れてる。






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