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先生≠彼【完】
#7

「け、け、けいちゃんっ」

今、したよね? キスしたよね? 神聖な学校で。しかもあたしの顔、びろんて伸ばされた変顔のままで。

あたしの動揺っぷりがおかしいのか、けいちゃんはプッと吹き出す。


「千帆、面白〜い。見てて飽きないね」
「誰かにみ、見つかったらどーすんのっ」
「んー、平気だろ。表の看板、閉館中にしておいたし。それでもわざわざ中窺うような本好きはこのガッコにはいなそう」

ここまでのけいちゃんの大胆不敵な行動に納得。…抜かりない。ってか、けいちゃん、それ、職権乱用…?


「これで仲直り。じゃな、千帆。また夜メールするよ」

一方的に宣言して、あたしの頭をポンと叩くと、けいちゃんは行っちゃおうとする。


「ま、待って」

あたしとけいちゃんしかいないなら、直接話したいことがもうひとつあった。


「ん?」
「けいちゃんとのこと…七海に言ってもいい?」

友達にまで、嘘をつかなきゃいけないのが切なすぎる。

七海が、うちのクラスの木塚七海だということに、けいちゃんは10秒くらい考えて、思い当たったらしい。


「あいつかあ。言わなくても、そのうちバレそうだな」

けいちゃん、自分のクラスの生徒、よく見てるなあ。七海の鋭いとこも、しっかり見抜いてる。


「誰にも話せないんじゃ、しんどい時もあるよな、そりゃ。千帆が言いたくて、彼女を信頼してるなら、いいよ。」
「…ありがと、けいちゃん」


早速次の日、帰り道の公園で七海に話したら、七海は唖然となってた。


「ちぃの彼氏のけいちゃんが、遠藤先生…」
「世の中、何が起こるかわかんないよねえ」
「信じられない。遠藤先生って、もっと知的なイメージだった。授業もわかりやすいし。いい先生だと思ってたのに、あんたのあのネジが一本抜けてそうな彼氏と同一人物なのお?」

いくら語る人物が変われば、語られる人物像も変わるったって、あんまりだ。とか何とか、言って、七海は別の方向にショックを受けてる。

ネジが一本…って失礼な。けいちゃんは底抜けにポジティブなだけだよ。あ、底抜けの方がネジがないより失礼かもしれない。


七海はしばらくぼんやりと考えてた。あたしは暇を持て余して、自販機で七海の分と2本、コーラを買って戻る。

あたしの手からコーラを受け取って、ごくごく飲んでから、七海はぽつりと言った。


「大変だったね、ちぃ」

大変、だったかって言うと。置かれた立場の深刻さに対して、けいちゃんの態度が軽すぎるから、七海に同情してもらうほどではないけれど。

それでも、あたしの気持ちに寄り添ってくれるような言葉に表情に、じんと来た。


「あ、うん…秘密にしてて、ごめんね」
「ま、しょうがないんじゃない? あーでも、遠藤先生モテるから、こんなのバレたら一大事だね。あたしは先生として尊敬してるだけだからいいけど、本気でムキーってなって、ちぃに攻撃してくる奴らとかいそう」

真っ先に沖本さんの顔が浮かんでしまった。


「あはは、そうだね」

教壇降りたら、けいちゃんなんて残念イケメンだけどなあ。ティッシュ手放せないし、脳天気だし。

そんな部分も含めて、あたしはけいちゃんが好きだけど。


「何かあったら、今度はあたしにも言えよ〜。助けるから」

七海の男前の台詞がくすぐったい、でも嬉しい。言う方も照れくさいみたいで、茶化すように頬を拳でぐりぐりされた。


「やめてよ〜」

なんて言いながら、じゃれあう。


七海に言えたことで、あたしは少しだけ心が軽くなった。



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あきゅろす。
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