先生≠彼【完】
#9
「イっちゃった?」
けいちゃんに聞かれて、今のがそういうことなんだ、って理解する。頭も身体もふわふわして、空に飛んでいっちゃいそうな、他のこと全部忘れて、けいちゃんの指が運んでくる気持ちよさしか考えられなくなっちゃう。
初めて、知った、感覚。
「し、知らないもん」
悔しくって恥ずかしくって、
「けいちゃんのえっち。セクハラロリコン教師」
そんな暴言をけいちゃんに浴びせる。
「はいはい。どうせ俺はロリコンですよ」
けいちゃんは丁寧にあたしのあそこをティッシュで拭って、あたしから離れてく。あれ? もう、終わり?
「つ、づきは…?」
いくらあたしでも、あたしばっかり気持よくて、けいちゃんはちっとも気持ちよくなってないことくらいはわかる。
「したい?」
「そーゆー意味じゃないけどっ」
「千帆が気持ちよくなればいいよ」
キワドイ発言をしながら、けいちゃんはシンクで手を洗って、さっき作ったコーヒーのフィルターを下に押し出す。抽出したコーヒーを一口だけ飲んでぼやいた。
「あーあ、作りなおすか」
4分という時間を大幅に過ぎたコーヒーは、やはりエグみが出ちゃって飲めないらしい。
ぼとぼと捨ててしまって、新たに作り直そうとしてる。
「ご飯食べよ?」
「う、うん…」
まるで授業が終わって休み時間になったみたいなけいちゃんの切り替えに、あたしだけ着いて行けない。
済ました顔で、トーストを焼き、スクランブルエッグを作ってるけいちゃんに、蒸し返すのも癪で、あたしはスクランブルエッグに添えるというレタスをバリバリちぎった。
普通の彼と彼女って、そういうものなのかな…。
朝御飯を食べて、ふたりでまったりしてから、散歩でもしようか、って話になった。けいちゃんの家の近くの公園の芝桜が綺麗らしい。
用心のためにけいちゃんは、黒いキャップを目深に被って、あたしはけいちゃんのサングラスを借りて、つけてみた。
「なんか、芸能人のお忍びデートみたい」
くすっと笑うと、けいちゃんも「そうだね」と笑って返してくれた。
彼と彼女で先生と生徒。この関係性を変えられないのなら、いっそ楽しんじゃえ。そんな開き直り。
でも、やっぱり間違ってたのかもしれない。日の当たる道は、卒業までけいちゃんと歩けないかもしれない。
広い公園を、けいちゃんとおしゃべりしながら歩いていたら、遥か前方に沖本さんを見つけてしまった。
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