先生≠彼【完】
♯6
見つけた番号に思わず、呟いてしまった。信じられなくて、目を見開いてもう一度掲示板を見る。
幻でも錯覚でもなくて、1467。あたしの番号がしっかりとそこに刻まれてた。
「ど、しよ…けいちゃん…」
瞳の際に押し出された涙、溢れ出しそうな嗚咽を堪えるように、手で口を押さえてひとりごちた。
嬉しい嬉しい嬉しい。
けいちゃんに真っ先に伝えたくて、事務所で入学の手続きの書類を受け取ると、あたしはすぐに学校に向かった。
学校に着いた時はちょうどお昼休みで、あたしはけいちゃんにメールして、駐車場に来て貰った。大学名の入った青い封筒を宝物みたいに抱きしめて、あたしはけいちゃんの助手席のドアに、背を持たれ掛けさせて、けいちゃんを待つ。
「春日」
すぐにけいちゃんは来てくれて、少し息を切らせながら、あたしに「どうだった?」って聞く。
あたしは封筒をけいちゃんの前に掲げた。
「受かってたよ」
けいちゃんも驚いて、一瞬目と口を大きく開いてぽかんとなる。あ、けいちゃん、絶対あたしが落ちると思ってたんだ。
穿った考えをあたしに抱かせるほど、間を置いてから、けいちゃんは顔を綻ばせた。
「良かったな、すごいじゃん、おめでとう」
笑顔全開で、上ずった声で、ぐりぐりって頭撫でられたら、今まで我慢してたものは一気に壊れた。
「頑張ったね、千帆」
「けいちゃん、あたし…あたし…」
たまらなくなって、けいちゃんの胸にしがみついた。また涙が溢れて来ちゃって、言葉は喉の奥に押し返されていく。
頑張れ、ってずっと励ましてくれて、今、こうやって一緒に喜んでくれる人の存在が、嬉しい。けいちゃんの腰に腕を回した。久しぶりに肌に感じるけいちゃんの温もりと匂い。ずっと感じていたかったのに。
「ちょっと待って…」
でも、けいちゃんは急に固くなった声で言って、あたしの肩を掴んで、自分の身体からあたしの身体を引き離す。
けいちゃんが見てる方に、あたしも目を向けて、全身の血が凍りつきそうになった。
浮かれて舞い上がって、ここが何処かってこと、あたしは完全に忘れてた。
「…遠藤先生?」
校舎から近づいてきたのは、校長先生だった。
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