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先生≠彼【完】
♯5

新学期。けいちゃんの腕に、あたしがクリスマスにあげた時計が嵌められてるの見て、思わずニヤケそうになって、慌てて顔引き締めた。

受験勉強のし過ぎか、みんなどことなく疲れた顔してる。話題も誰が何処の大学狙ってるとか、センター試験受けるとか受けないとか、受験のことばかり。

中学の時も受験はしたけど、高校受験は、内申点の割合も高くて、担任の先生も安全圏の学校しか勧めて来なかったから、よっぽどのことがない限り、大丈夫…って言われてた。

でも、今度はほぼ一発勝負だし、誰も太鼓判なんて押してくれない。一ヶ月後のあたし、どうなってるんだろ…。



〜*〜*〜*〜*〜


初めて入った大学の教室。張り詰める緊張感にごくんとツバを飲み込んだ。

みんな、頭良さそう…。受験番号の席に座る際の椅子を引く音すら響いた。


試験の始まりを告げるチャイムが鳴って、一斉にみんなが問題を解き始める。カリカリカリカリ。シャーペンの芯が、紙の上を走る音がすごく耳障り。

自分も同じ音立ててるのに、人の音が、早く大きく聞こえる。みんな、問題解くの早い。

焦って、問題読むんだけど、目が滑って、なかなか集中出来ない。あ、これ、この間やったのとおんなじ…でも、どうやって解くんだっけ。


あー、どうしよう、この問題に5分も掛けちゃった。わかんない問題あったら、飛ばして先行った方がいい、って言われてたのに。気が付くと、試験時間は残り半分だ。


気ばかり焦って、脳みそは回転してくれない。


半分とちょっと答えを埋めたところで、試験終了のチャイムが鳴った。




〜*〜*〜*〜*〜*〜


目覚ましのアラームが鳴って、あたしははっと飛び起きる。


夢? 今の夢だよね? 脇にも背中にもびっしょり汗をかいてた。嫌な、夢。

ふうっと大きく息をついて、思い出す。夢じゃ、ない。一昨日の記憶だ。


センター試験の初日、あたしは大失敗したんだった…。





重たい足取りで、教室に入ると、みんなセンター試験の答え合わせや感想言い合ってる。この中で、あたしがいちばん得点低いかもしれない。


「おはよ」
「あ、おはよ」

七海に肩を叩かれて、ぎこちなく笑い返した。


「どした? ちぃ」
「…あたし、大学行けないかも…」

教室の空気が嫌で、あたしは廊下に飛び出した。隣のクラスの本田先生にぶつかった。ってことは、もうSHR始まるのかな。


逃げるように体育館の裏まで走った。ポケットの中の御守をぎゅっと握る。けいちゃんに貰ったピンキーリングも入ってて、装飾のハートが掌に食い込んだ。

けいちゃんに、合わせる顔、ないよお。




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