先生≠彼【完】
♯6
週明け学校に来たけいちゃんは、マスクしてた。アレルギーかな…と思ったけど、顔色も良くなくて、声も張りがないし、なんとなくぼんやりしてる。
「先生、大丈夫?」
SHRが終わってから、何人かのクラスメートがけいちゃんを追いかけて、心配そうに聞く。あたしもその輪の中に入っていった。
「ん? ああ、風邪っぽいから、お前ら近寄らない方がいいぞ。今、体調崩されたら、俺の方が困る」
言いながら、けいちゃんはどんどん後ずさりして、あたしたちから遠ざかってく。
「えー、先生、病院行った?」
逃げるようなけいちゃんに、どんどん近づいていって、そう聞いたのは麻衣ちゃん。
「行った行った。休日診療の病院探してな。薬、4種類も貰ってきたから」
咳き込みながら、けいちゃんはそう答えて、くるりと踵を返して、足早に階段を降りていく。
夜、あたしから電話した時も、やっぱり声がハスキーになってて、受話器の向こうで何度も咳払いしたり、咳してた。
「学校休まなくていいの?」
「平気だって」
「なんか、欲しいものある?」
「千帆の合格通知かな〜」
「…それは、取得に向けて、鋭意努力中です」
「うん、だから俺のことは心配しないで」
平気だよ、と差し伸べた手を拒まれてしまうのが、悲しい。
けいちゃんはけいちゃんで、あたしのことを考えてそう言ってるんだってわかってても、踏み込んじゃいけない一線を引かれてるみたい。
(一緒に住んでたら)
傍にいるくらいは出来るのに…。
そんなこんなの会話を毎晩のようにしてても。けいちゃんの具合は、良くなるどころか、どんどん悪化していって。
3日めは朝のSHRの時には、姿見せてくれたのに、帰りの時には、副担任の島崎先生が教室に現れた。
一気にどよめいたクラスの雰囲気を「静かにしなさい」と、ベテランのおばちゃん先生は、
一喝で制してから、事情を説明する。
「遠藤先生、具合が悪いとのことで午前中で帰られました。みなさんも体調管理しっかりしてくださいね」
…こんな最悪の状況に陥ってさえ、けいちゃんはあたしに頼ってくれないのかな。
居ても立ってもいられなくて、家に帰って、冷蔵庫や食品ストックの棚、シンクの下を漁ってたら、お母さんに見つかった。
「何、やってるの? 千帆」
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