RO*意地悪な君 「お前がヤラせてくれんならいいぜ」 「…へ…?」 放課後の練習がない日の部活。 オレは大変な事を言われています。 「や、あの…ただ練習に付き合って欲しいだけで…」 「だぁから、お前がヤラせてくれたらいいっつの」 「いや、なんでそーなるんだよ?!」 あ、安仁屋はゲイじゃないです、一応…。昨日も普通に女の子連れ込んでたし…。 ほ、ホントにオレに言ってんのか…?キョロキョロと辺りを見回してみる。 …誰もいない。 「え、え…本気かぁ…?」 「本気だよ」 「オレ男だよ?」 「知ってんよ」 えぇー… な、何でだろう。何でいきなりオレ? オレがうーんと考え込んでいると、安仁屋はイラッとしたのか近付いてくる。 「いーから早く脱げ」 「なっ!脱がないよ!大体何で…!」 「うっせーな!」 怒鳴って抵抗するが、安仁屋は更に大きな声を出してオレを黙らせる。 その怒鳴り声にびくついたオレは下を向き、目をぎゅ、と閉じる。安仁屋はそんなオレを冷たい目で見下ろしていた。 その目が、いつもと違う光を含んでいるのに気付かず、オレは目を閉じ続ける。 だって怖い。 殴られるかもしれない。 びくびくして安仁屋の行動を伺っていると、す…と襟首に手をかけられた。 (な、ぐられる…?) しかし思ったような痛みは来ず、ボタンをプチプチと外されていることに気付いた。 「っや、だから…!」 慌ててボタンを外している安仁屋の手を掴む。 しかしピッチャーの腕力にはどうにも勝てず、安仁屋はびくともせずにボタンを外し続ける。力の差が大きすぎて、オレは泣きたくなってしまう。 ぐい、とYシャツを引っ張られ、胸元が露わになる。 「っひ…!」 「うっすい胸板だな」 安仁屋は軽く笑うと、するりとオレの体を撫で始めた。 「や、っ…やめろ、安仁…」 「口ごたえすんな!」 「っ」 イキナリ怒鳴られたオレは、びく、とみっともなく体を震わせてしまう。 なんでオレなんか… 他に女はいっぱいいるだろうに、なんでオレを抱こうとしてるんだ… 無意識にぽろ、と涙が零れてしまった。 その涙に安仁屋はぎょっとしていたらしい、襟首を掴んでいた手がパッと離れた。 「…泣くなよ…」 バツが悪そうに安仁屋が呟く。 「だ…って…他に女…いるだろ?…なんでオレ、なんだよ…」 ひく、としゃくり上げながら言う。あぁ、オレホントにみっともない… 安仁屋の方を向けずにいると、小さな舌打ちが聞こえた。 「女とか…そういう性欲処理みたいな感じじゃねぇんだよ…」 バツが悪そうに安仁屋が呟く。 ひく、としゃくり上げ相手を見上げると、安仁屋は心底困った顔をしていた。 「…?」 「好きでやってんだよ、お前の場合!」 …好き? 「え…お前…男が好きなのか…?」 キョトンとしてしまう。だって、「好き」だろ?オレは安仁屋に好かれるほど出来た人間じゃない。野球だって上手くないし容姿だって… オレの言葉を聞いて、安仁屋はがくんと頭を垂れた。額に手を当て、そのまま髪の毛をかきあげる。 「オレはホモじゃねぇ…」 「え、だって今好きでやってる…って…」 「…だから!」 安仁屋はまた大きな声を出す。 「…お前だからいいんだって…」 照れたように呟く相手を見て、オレは大きく目を見開いた。 「へ?…嘘ぉ」 「嘘でこんなきめぇ事言うか馬ぁ鹿!」 …逆ギレされた。 の割に安仁屋の顔が真っ赤なのに気付いた。 あぁ、ホントに好きなのかこいつ… 改めて思うと、なんだかこっちまで恥ずかしくなってきてしまう。 そんな真っ赤な顔を見せられちゃ… 「ど、どこが…?」 そう慎重にきいたオレは多分安仁屋に負けないくらい赤くなってると思う。 答えを待つ間、心臓がバクバクした。 安仁屋はしばらくうーんと考え、にや、と笑った。 「言わなくても分かんだろ」 うわっ、ずるい…! 「言わなきゃ、わかんないって…」 なんだかこっちが圧されてる気がする…。 オレはタジタジと言葉を紡いだ。 我が儘かもしれないけど言って欲しいんだ。 だけど、やっぱり安仁屋は笑ったままで。 「じゃー分かんなくていいって」 その笑顔が凄く眩しくて、オレはくらくらした。 だけどこのままじゃ悔しいから、精一杯反論した。 「じゃあ、教えてくれるまで…ヤるのは無しな…練習は関川とか誘うし…」 「はぁっ!?」 驚く安仁屋を、オレは満足げに見つめた。 意地悪な君には、意地悪な仕返しを。 End. |