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気まぐれ短編集
遊び心
「好きです!俺と付き合ってください!」

そう言われて付き合い始めてからから早二年。
俺達は高校生になった。

「ちーちゃーん!」

「戒…。」

振り返るとこちらに走ってくる戒(かい)がいた。
こいつとは中学2年の時に付き合い始めた。
それまではただの友達で、恋だの愛だのなんて感情は一切なくて、告白された時は遊び半分で付き合った。
それが今では本気になってる自分がいる。

「ちーちゃん!待っててくれればいいのにー!」

「一緒に帰るのなんて恥ずかしくて出来るかっ!」

「でもいつも帰ってるじゃないかぁ!」

「もー!」と言いながら肩にもたれかかってくる戒。
最近はそんな些細な事にドキドキする。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、耳元で

「ちーちゃん大好き…」

と囁かれれば、腰砕けだ。
だが、悟られないようにあえて無言でいれば戒は一瞬だけ、どこか寂しそうな顔になった。

なぜかはわからないがこれはあまり見たい表情ではないと思った。

「今日家来るか?」

そう言うと戒は一瞬驚いた顔になったが、すぐに嬉しそうな笑顔で頷いた。

あっ、俺この表情は好きだ。
歩いている間戒はずっとにこにこしていた。
そんなに嬉しいのか…?
あぁ…そう言えば俺の家に連れてくるのは初めてか…。



そんな事を考えながら数分歩けばすぐに家に着いた。

「コーヒーとお茶とジュース、どれがいい?」

と聞くと「苦いの苦手だからジュースで」と戒は微笑した。
可愛い…。
いやいや。何考えてんだ俺!
心の中で1人ノリツッコミをしていると後ろから抱き締められた。

「ちーちゃん…好きだよ…」

「そう…」

心臓はバクバクだけど、恥ずかしいから素っ気ない返事になっちまう。
ダメだなぁ…と思っていると首筋に冷たい筋が流れた。
しかも、よく聞けば小さな嗚咽まで聞こえる。

なっ…泣いてる!?

内心アワアワして焦っていると、途切れ途切れの声が聞こえた。

「ご、ごめんね…本当、は、俺の事、す…好きじゃ、ないんだよね…。俺、が、しつこい、から…無理、に、付き合ってくれ、てるん…だよね。」

違うのに…なんて言えばいいんだ…。

「俺の、こと…気持ち、悪い、と、思って…遊び、半分で、付き、合って、くれてる、んでしょ?」

確かに最初は遊びだった。
だけど、今はそれが本気で…
あぁ…もぅ!
この際細かい事はどーでもいい!
なるようになれだ!

俺は戒をこちらに向かせ顔をぐぐっと引き寄せて軽いキスをした。
戒は何が起こったのかわからないようで一瞬固まったが、状況が理解出来ると、涙で濡れた顔を真っ赤にして俺から離れた。

なんで離れるんだか。なんて思ってしまい、俺はこいつのことが本当に好きなんだなぁ…と実感する。

戒は困惑した表情を浮かべていた。
だから、今まで言えなかった事を言ってみる。

「戒。俺、お前の事好きだ。」

そしたら、戒はまた涙ぐんで、でもさっきより嬉しそうで。
今度は向こうからキスされた。

「俺も、大好きだよ!」

そう言われてそのまま押し倒される…

「って俺が下!?」

「えっ…ダメ…?」

そんなダメ?って捨てられた子犬みたいな顔で言われたらダメって言えないでしょう!?

「わかった…けどせめてベッドに行こう?」

せめて心の準備をと思うけど、笑顔で「うん。」と言われたらもうこの先を断ることなんて出来ない。

でも、俺は仕方ないなと微笑んでしまう。
だってこれは、遊びだった恋が本気になった時から、俺の負けなんだから…

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あきゅろす。
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